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[SVC48-P15] 種子島に分布する幸屋火砕流堆積物の噴出順序
キーワード:鬼界カルデラ、幸屋火砕流、火山ガラス、種子島
幸屋火砕流(宇井,1973)は、約7300年前(福沢,1995)の鬼界カルデラを給源とする鬼界アカホヤ噴火時に発生した大規模な火砕流である。鬼界アカホヤ噴火は大規模なプリニー式噴火による降下軽石に始まりイントラプリニアン火砕流を発生、続く幸屋火砕流の噴出で終了した(町田・新井,2003;Maeno and Taniguchi,2007;藤原・鈴木,2013)。幸屋火砕流堆積物は鬼界カルデラ周辺を取り巻く陸域(薩摩・大隅半島、種子島、屋久島、口永良部島)で分布が確認されている(町田・新井,1978;Maeno and Taniguchi,2007)。鬼界アカホヤ噴火の一連の噴出物には、SiO2 = 75 wt.%前後の「高SiO2ガラス」とSiO2 = 65 wt.%付近の「低SiO2ガラス」の2種類の火山ガラスが含まれ、幸屋火砕流堆積物中では両ガラスの量比が、上下変化を見せる(藤原・鈴木,2013)。藤原・鈴木(2013)では、両ガラスの量比に基づき噴出順序の対比を行い、幸屋火砕流噴火初期の噴出物がカルデラ北方へ到達・堆積したとした。しかし、カルデラ南方の堆積物については、詳細は調べられていない。
鬼界カルデラの南方に分布する幸屋火砕流堆積物は、カルデラの南約30 kmに位置する屋久島では、カルデラに面した北西部では厚く2~3 mを超える地点も存在し、さらに内陸部の山岳地帯でも主に層厚50 cm以下の堆積物が確認されている(下司,2009)。しかし、鬼界カルデラの東~南東約50 kmに位置する種子島では、幸屋火砕流堆積物の層厚は50 cm以下と薄く、標高300 m以下で屋久島と比較し大きな地形による障壁がないにも関わらず、北部で基盤の直上にアカホヤ火山灰が堆積し、幸屋火砕流堆積物が確認できない地点が存在することが指摘されている(藤原・鈴木,2013)。この幸屋火砕流堆積物の欠如に関しては、2015年9月に行った調査でも確認し、北部で5地点、また、新たに中南部でも2地点確認した。
本研究では、種子島における幸屋火砕流堆積物の分布の有無がどのような要因によりもたらされたかを探るため、藤原・鈴木(2013)に基づき種子島の堆積物について噴出順序の対比を試みた。
種子島の幸屋火砕流堆積物の基底部から上位へ一定間隔で試料を採取し、各層順ごとにマトリックス中の火山ガラスを50~200個選び電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて化学組成を測定し、測定結果のうちSiO2を横軸にとり、その組成幅ごとに検出されたガラスの数をヒストグラムで示し、噴出順序を対比した。これまで種子島中部から南部にかけての3地点で幸屋火砕流堆積物の最下位を、うち2地点では最上位も測定した。
その結果、最下位に関しては3地点すべてにおいて高SiO2ガラスのみが検出された。また、最上位に関しては、2地点のうち1地点は高SiO2ガラスのみであったが、もう1地点では低SiO2ガラスが検出された。
以上の結果から、1地点ではあるが最下位に高SiO2ガラスのみ、最上位に低SiO2ガラスが認められる地点が存在することから、種子島も九州島と同様に噴火初期の噴出物が到達・堆積したことが推定され、種子島北部を挟んで南北で到達・堆積した流れに違いはなかったと考えられる。また、カルデラと種子島の間に地形的障壁はなく、島内は比較的平らで標高が低いため、分布の有無は流れの到達・未到達によるとは考えにくいことから、種子島の幸屋火砕流堆積物の分布の有無の要因は、流れの到達の有無ではなく流れからの堆積の有無によると推定される。
今後、種子島の幸屋火砕流堆積物の対比をより正確に行うため、測定地点を増やし、また下位から上位への連続変化を見るため中位部分の測定も進めていく予定である。
鬼界カルデラの南方に分布する幸屋火砕流堆積物は、カルデラの南約30 kmに位置する屋久島では、カルデラに面した北西部では厚く2~3 mを超える地点も存在し、さらに内陸部の山岳地帯でも主に層厚50 cm以下の堆積物が確認されている(下司,2009)。しかし、鬼界カルデラの東~南東約50 kmに位置する種子島では、幸屋火砕流堆積物の層厚は50 cm以下と薄く、標高300 m以下で屋久島と比較し大きな地形による障壁がないにも関わらず、北部で基盤の直上にアカホヤ火山灰が堆積し、幸屋火砕流堆積物が確認できない地点が存在することが指摘されている(藤原・鈴木,2013)。この幸屋火砕流堆積物の欠如に関しては、2015年9月に行った調査でも確認し、北部で5地点、また、新たに中南部でも2地点確認した。
本研究では、種子島における幸屋火砕流堆積物の分布の有無がどのような要因によりもたらされたかを探るため、藤原・鈴木(2013)に基づき種子島の堆積物について噴出順序の対比を試みた。
種子島の幸屋火砕流堆積物の基底部から上位へ一定間隔で試料を採取し、各層順ごとにマトリックス中の火山ガラスを50~200個選び電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて化学組成を測定し、測定結果のうちSiO2を横軸にとり、その組成幅ごとに検出されたガラスの数をヒストグラムで示し、噴出順序を対比した。これまで種子島中部から南部にかけての3地点で幸屋火砕流堆積物の最下位を、うち2地点では最上位も測定した。
その結果、最下位に関しては3地点すべてにおいて高SiO2ガラスのみが検出された。また、最上位に関しては、2地点のうち1地点は高SiO2ガラスのみであったが、もう1地点では低SiO2ガラスが検出された。
以上の結果から、1地点ではあるが最下位に高SiO2ガラスのみ、最上位に低SiO2ガラスが認められる地点が存在することから、種子島も九州島と同様に噴火初期の噴出物が到達・堆積したことが推定され、種子島北部を挟んで南北で到達・堆積した流れに違いはなかったと考えられる。また、カルデラと種子島の間に地形的障壁はなく、島内は比較的平らで標高が低いため、分布の有無は流れの到達・未到達によるとは考えにくいことから、種子島の幸屋火砕流堆積物の分布の有無の要因は、流れの到達の有無ではなく流れからの堆積の有無によると推定される。
今後、種子島の幸屋火砕流堆積物の対比をより正確に行うため、測定地点を増やし、また下位から上位への連続変化を見るため中位部分の測定も進めていく予定である。