日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC49] 火山現象の即時理解:地球物理・物質科学観測と物理モデルの統合

2016年5月24日(火) 09:00 〜 10:30 コンベンションホールB (2F)

コンビーナ:*奥村 聡(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、小園 誠史(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、青木 陽介(東京大学地震研究所)、座長:奥村 聡(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、青木 陽介(東京大学地震研究所)

10:15 〜 10:30

[SVC49-06] 玄武岩質マグマの注入によって誘発された桜島火山2015年の噴火活動:岩石学的モニタリングデータからの推定

*松本 亜希子1中川 光弘1井口 正人2 (1.北海道大学大学院理学研究院、2.京都大学防災研究所火山活動研究センター)

キーワード:桜島火山、火山ガラス組成、全岩化学組成、時間変化

九州南部に位置する桜島火山は、2006年6月に昭和火口において噴火活動を再開し、火山爆発を繰り返してきた。2014年にはその活動は低調になっていたが、2015年1月より山体が明瞭に膨張しはじめ、活動も活発になり、6月までに火山爆発回数が700回を超えた。また、8月15日にはダイク貫入イベントが起きたため、大規模噴火への移行が懸念された。このように、2015年の活動は、活発化の後にダイク貫入に至るというこれまでにない活動推移を辿っており、マグマ供給系に何らかの変化があった可能性がある。そこで、我々は2015年1月~6月の噴出物(火山礫)の岩石学的特徴を明らかにし、地球物理学的データと比較することで、2015年の活動の活発化の要因について検討する。
2015年の火山礫試料は、緻密岩片・スコリア・軽石、少量の強変質岩片からなる。斑晶鉱物として斜長石・斜方輝石・単斜輝石・磁鉄鉱を含み、一部の試料には少量のかんらん石が認められる。かんらん石の殆どは反応縁を持たずFo80-81を示し、共存する斜方輝石(Mg#62-74)・単斜輝石(Mg#67-78)と組成的に非平衡である。全岩化学組成はSiO2=58.3-59.0wt.%と最も苦鉄質であり、ハーカー図では2006年以降の昭和火口噴出物の組成トレンド上にプロットされる。石基ガラス組成においても、2014年以前と比べると顕著にSiO2量が低下しており、さらに2015年の中でも時間と共に苦鉄質になる傾向がある。
2015年噴出物の岩石学的特徴が2006年以降の昭和火口噴出物と類似しており、全岩化学組成トレンドも調和的であることから、2015年の活動においても、2006年以降の昭和火口の活動と同様のマグマシステムが活動していると考えられる。2014年以前と比べると、全岩化学組成および石基ガラス組成が明らかに苦鉄質な組成を示すことから、2015年から玄武岩質マグマの注入が顕著になったと解釈される。地球物理学的データと比較すると、2015年1月以降、噴出マグマ中の玄武岩質マグマの影響が増大するにつれ、山体が明瞭に膨張し、活動も活発化している。その後、ダイク貫入イベントへ移行していることから、2015年1月以降の活発化は、玄武岩質マグマの新たな注入が引き起こした可能性が高いといえる。