17:15 〜 18:30
[SVC49-P10] 不均一な気泡分布をともなう発泡マグマ破砕過程の解明
キーワード:マグマ、破砕、X線CT撮影、有限要素解析
火山の「爆発的噴火」は,マグマの脆性破砕によるマグマ内ガスの急激な放出によって引き起こされると考えられている.そこで本研究では,脆性破砕,特に,発泡マグマ模擬材料(以下:試料)のバルク的な性質が流体的であるにかかわらず固体的な挙動を示す「脆性的破砕(brittle-like fragmentation)」(Kameda et al. JVGR 2013)に着目し,そのメカニズムに対するマグマ内の気泡分布構造の影響を調べた.これまでの実験(Shida et al. IAVCEI 2013; 亀田ら 地惑連合大会 2014)から,脆性的破砕を引き起こすき裂の進展は,試料内部における気泡分布の不均⼀な分布をきっかけに生じていると推察される.
試料の材料には,酸素気泡を含む水あめを用いた.これは,水あめの剛性率はマグマに近く,また,マグマ同様に幅広い粘度を持たせることができるためである.破砕の発生には急減圧装置を用いた.これは,試料を入れる圧力容器とプラスチック膜から構成されている.圧力容器に試料を入れ,目標圧力まで容器内に窒素ガスを充填する.その後,プラスチック膜に貼り付けられたニクロム線を通電加熱し,その熱でプラスチック膜を破ることで,急減圧を行う.
試料は,直径約20 mm,高さ約10 mmの半球状である.各試料は粘度が10,50,100 MPa・s,の三通り,試料のボイド率は数%~数10%の範囲に設定した.目標圧力は約2MPa,減圧特性時間(容器内圧力が目標圧力の1/eになる時間)は約3 msとした.
試料の内部構造を把握するために,高輝度光科学センター(Spring-8)のビームラインにてX線マイクロCT撮影を行い,試料の透過像(15.5μm/pixel)を取得した.透過像から得たシノグラムを,CBP法を用いて再構成することで断面図を取得した.CT撮影は,加圧前,加圧後,急減圧後の3つのタイミングで行った.また急減圧時には高速度ラジオグラフィ(100fps),高速度可視光カメラ(10,000fps)による撮影を行い,急減圧を受ける試料の挙動を動的に捉えた.
高速度可視光カメラにて撮影した,破砕の一例を図1に示す.この試料の粘度は50 MPa・s,加圧後の平均ボイド率は7.6 %である.図1から,手前の部分で破砕が起こっている事が分かる.図2に断面図から得た,三次元像を示す.図2を見ると,手前には主に大きい気泡と,それに隣接している小さい気泡が存在しており(緑破線),この二つの気泡が図1に示す破砕を引き起こしたと考えられる.
一方,同じ粘度の試料においても,全体的に中型の気泡が存在しており,全体的に破砕が起こるケースや,小さい気泡のみ存在しており,破砕が起こらなかったケース,も存在した.以上より,粘度が同じ場合においても,内部の気泡構造の違いにより,破砕する場合と破砕しない場合がある,ということが確認できた.
次に,急減圧を受ける試料の応力場について有限要素解析を行った.これまでの数値計算(黒川ら 地惑連合大会 2015)から,応力集中による臨界脆性度(Ichihara et al. JGR 2010)の上昇が破砕につながるということが分かっている.これまで用いた計算ジオメトリは球殻モデルであったため,今回は実験に用いた試料の三次元像を計算ジオメトリとし,応力場計算を行った.計算プラットフォームはCOMSOL Multiphysics ver5.0を用いた.用いた三次元モデル(図2)は,加圧後のCT撮影により得られた,断層画像を積み上げることで作成した.この方法によって,実際に急減圧実験に用いられた試料の表面や内部構造を再現した三次元モデルを作成することが可能である.ただし,コンピュータ資源の制約から,計算には破砕に大きく関与したと思われる気泡と,その周辺をトリミングした領域(図2)を用いた.計算に用いた各物理量は,急減圧実験のものを使用した.
計算結果(図3)をみると,大気泡と小気泡の間では応力集中が起こっており,実験結果を支持していた.また,試料の表面応力場の計算結果と,可視光による高速度カメラ撮影によって得られた破断面の画像を比較すると,周りよりも応力が高い部分と,破砕が起こった部分は一致していた.よって,応力計算により破砕箇所の再現を行うことが可能である,ということが示唆された.
試料の材料には,酸素気泡を含む水あめを用いた.これは,水あめの剛性率はマグマに近く,また,マグマ同様に幅広い粘度を持たせることができるためである.破砕の発生には急減圧装置を用いた.これは,試料を入れる圧力容器とプラスチック膜から構成されている.圧力容器に試料を入れ,目標圧力まで容器内に窒素ガスを充填する.その後,プラスチック膜に貼り付けられたニクロム線を通電加熱し,その熱でプラスチック膜を破ることで,急減圧を行う.
試料は,直径約20 mm,高さ約10 mmの半球状である.各試料は粘度が10,50,100 MPa・s,の三通り,試料のボイド率は数%~数10%の範囲に設定した.目標圧力は約2MPa,減圧特性時間(容器内圧力が目標圧力の1/eになる時間)は約3 msとした.
試料の内部構造を把握するために,高輝度光科学センター(Spring-8)のビームラインにてX線マイクロCT撮影を行い,試料の透過像(15.5μm/pixel)を取得した.透過像から得たシノグラムを,CBP法を用いて再構成することで断面図を取得した.CT撮影は,加圧前,加圧後,急減圧後の3つのタイミングで行った.また急減圧時には高速度ラジオグラフィ(100fps),高速度可視光カメラ(10,000fps)による撮影を行い,急減圧を受ける試料の挙動を動的に捉えた.
高速度可視光カメラにて撮影した,破砕の一例を図1に示す.この試料の粘度は50 MPa・s,加圧後の平均ボイド率は7.6 %である.図1から,手前の部分で破砕が起こっている事が分かる.図2に断面図から得た,三次元像を示す.図2を見ると,手前には主に大きい気泡と,それに隣接している小さい気泡が存在しており(緑破線),この二つの気泡が図1に示す破砕を引き起こしたと考えられる.
一方,同じ粘度の試料においても,全体的に中型の気泡が存在しており,全体的に破砕が起こるケースや,小さい気泡のみ存在しており,破砕が起こらなかったケース,も存在した.以上より,粘度が同じ場合においても,内部の気泡構造の違いにより,破砕する場合と破砕しない場合がある,ということが確認できた.
次に,急減圧を受ける試料の応力場について有限要素解析を行った.これまでの数値計算(黒川ら 地惑連合大会 2015)から,応力集中による臨界脆性度(Ichihara et al. JGR 2010)の上昇が破砕につながるということが分かっている.これまで用いた計算ジオメトリは球殻モデルであったため,今回は実験に用いた試料の三次元像を計算ジオメトリとし,応力場計算を行った.計算プラットフォームはCOMSOL Multiphysics ver5.0を用いた.用いた三次元モデル(図2)は,加圧後のCT撮影により得られた,断層画像を積み上げることで作成した.この方法によって,実際に急減圧実験に用いられた試料の表面や内部構造を再現した三次元モデルを作成することが可能である.ただし,コンピュータ資源の制約から,計算には破砕に大きく関与したと思われる気泡と,その周辺をトリミングした領域(図2)を用いた.計算に用いた各物理量は,急減圧実験のものを使用した.
計算結果(図3)をみると,大気泡と小気泡の間では応力集中が起こっており,実験結果を支持していた.また,試料の表面応力場の計算結果と,可視光による高速度カメラ撮影によって得られた破断面の画像を比較すると,周りよりも応力が高い部分と,破砕が起こった部分は一致していた.よって,応力計算により破砕箇所の再現を行うことが可能である,ということが示唆された.