日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-04] 連合は環境・災害にどう向き合っていくのか?

2016年5月25日(水) 13:45 〜 15:15 国際会議室 (2F)

コンビーナ:*田中 賢治(京都大学防災研究所)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)、座長:田中 賢治(京都大学防災研究所)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)

14:15 〜 14:30

[U04-02] 第四紀研究の地震災害調査研究への取り組み

*奥村 晃史1吾妻 崇2 (1.広島大学大学院文学研究科、2.産業技術総合研究所)

キーワード:第四紀、地震、活断層

第四紀研究は現在を含む最新の地質時代における自然と人類の歴史を解明する学際的な研究であり,未来を解くための鍵である過去の自然について膨大な知見がもたらされている.第四紀研究の成果は,今後の気候・環境変動予測に多大な貢献をしてきたが,自然災害の予測とリスク軽減に関しても同様に大きな意味を持っている.2015年夏に名古屋で開催された国際第四紀学連合 (INQUA) 第19回大会のテーマは『第四紀学から見た気候変動、自然災害と文明』であり,メインテーマのひとつに『自然災害リスク軽減のための第四紀研究』が掲げられた.近年繰り返された巨大地震や津波による激甚被害を受けて日本で開催された大会で,はじめて自然災害がテーマとされたことは,INQUA の重要な課題として自然災害が認識されたことを象徴している.
INQUA の自然災害研究の中心は1970年代に組織された Neotectonics Commission と2003年にそれを引き継いだ Terrestrial Processes, Deposits, and History Commission (TERPRO)の 古地震研究グループによる,地震・活断層・地殻変動の研究である.日本第四紀学会はこれらに対応するテクトニクス研究委員会を設け,交流をしながら研究を推進してきた.古地震研究グループの大きな成果の一つは,2007年に完成した『Environmental Seismic Intensity Scale - ESI 2007』である.また,2008年以降は ESI 2007を検証し発展させるための古地震研究プロジェクトが積極的に展開されてきた.2015年に刊行された IAEA-TECDOC-1767, 『The Contribution of Palaeoseismology to Seismic Hazard Assessment in Site Evaluation for Nuclear Installations』は古地震研究プロジェクトの主要メンバーが作成したものであり,第四紀研究の重要な成果といえる.
INQUA では要旨執筆の時点で2015〜2019大会間期間の研究プロジェクトの選考が行われているが,古地震研究グループは,地表地震断層をより正確に見落としのないように記録する手法の改良と,過去の地表地震断層のカタログの高度化をもとに,地震規模のスケーリング則を見直すとともに断層変位発生予測手法の開発をすすめる研究を提案している.この研究提案の背景には,2014年にカリフォルニアと長野県で発生した,小規模な地震による明瞭な地表地震断層がある.2014年8月24日の South Napa 地震 (Mw 6.0) では,延長 12.5 km にわたって,最大右横ずれ変位量 46 cm の地表地震断層が出現した.断層の一部はこれまでに記載されていた West Napa 断層に沿って現れたが,北半は West Napa 断層のジョグ内部の断層が記載されていない領域に現れた.2014年11月22日長野県北部地震 (Mw 6.2) では,延長26 km の糸魚川—静岡構造線活断層系神城断層北端部の約9km に最大 80 cm ほどの逆断層変位が現れた.経験的に地表地震断層を伴う地震の規模は概ね Mw 6.5 かそれ以上のことが多かったが,2014年の二つの地震は Mw 6.0 前後の規模にもかかわらず明瞭な地表変位が現れた.小規模な地震が明瞭な地表変位を引き起こすメカニズム,地表地震断層に基づく地震規模のスケーリング則のマグニチュード5程度までの検討,さらに地震時に地表変位を洩れなく正確に計測する手法開発など,多くの課題が検討される予定である.なお,2014年 South Napa 地震の地震直後の現地調査では,California Geological Survey が中心になって現地に開設した Earthquake Clearing House が調査成果を迅速に取りまとめて GIS を用いて発信するとともに,異なる機関の調査団の交流と調整の場を提供して,地震後調査の効率化と緊急の調査実施の実現に大きな役割を果たした.