日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-05] Future Earth - 持続可能な地球へ向けた統合的研究

2016年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 301B (3F)

コンビーナ:*氷見山 幸夫(北海道教育大学名誉教授)、岡本 耕平(名古屋大学大学院環境学研究科地理学講座)、安成 哲三(総合地球環境学研究所)、植松 光夫(東京大学大気海洋研究所)、谷口 真人(総合地球環境学研究所)、座長:谷口 真人(総合地球環境学研究所)

14:45 〜 15:00

[U05-05] 「永久凍土と文化」からみる、環境変動研究の協働

★招待講演

*飯島 慈裕1檜山 哲哉2高倉 浩樹3 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構・北極環境変動総合研究センター、2.名古屋大学・宇宙地球環境研究所、3.東北大学東北アジア研究センター)

キーワード:永久凍土、湿潤化、東シベリア

地球温暖化の影響が最も早く現れるといわれる北極域と環北極域に位置する北東ユーラシアでは、1990年代から進む気温と永久凍土温度の上昇傾向に加え、降水量変動に起因する水循環の変調が多く確認されている。最近数十年間に進行している広域的な気候変化は、北方林と草原が混在する自然環境の安定性を脅かし、その中で牧畜や自然資源を利用している伝統的な生業に影響が出るとともに、サーモカルスト地盤沈下や斜面崩壊の頻発で都市地域や社会インフラの開発・維持においても問題が山積するなど、従来の知識で人々が対処できる能力を超えつつある。
このような問題意識をもとに、地球研の「温暖化するシベリアの自然と人」(シベリアプロジェクト)が2007~2013年度に実施された。そこでは、永久凍土-生態系-河川水文と繋がる自然環境変化が、春・夏洪水の頻発によるアラスやレナ河中州の草原を利用した牧畜用の干草採集に多大な被害を与え、河川周辺の集落の越年洪水によって移転を余儀なくされる実態が自然・社会科学の協働で生々しく明らかとなった。これらの成果の波及と、東シベリア地域に対する国際的な関心の高まりから、2014~2015年度には、国際永久凍土学会のAction Groupによる「永久凍土と文化(Permafrost and Culture: PaC)」が組織され、現地研究者やステークホルダーとの協働を念頭に、自然・社会科学両面からの議論が進められている。その論点は以下のようにまとめられる。自然科学的側面では、1)現在の永久凍土-生態系景観はいかに作られたか、2)現在生じつつある変化は何か、3)その主要な生物・物理的な変化過程は何か、である。社会科学的観点からは、4)人々は自然条件の中でどのように暮らしてきたか、5)現在はどのように自然環境を利用しているか、そして6)将来にわたって継続利用することはいかにして可能になるか、である。
本発表では、シベリアの地域研究における問題意識と研究プロセスの創出が、地球環境変動研究と対処の協働に向けた実効的なアプローチとなる可能性を提起したい。