日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-05] Future Earth - 持続可能な地球へ向けた統合的研究

2016年5月22日(日) 15:30 〜 17:00 301B (3F)

コンビーナ:*氷見山 幸夫(北海道教育大学名誉教授)、岡本 耕平(名古屋大学大学院環境学研究科地理学講座)、安成 哲三(総合地球環境学研究所)、植松 光夫(東京大学大気海洋研究所)、谷口 真人(総合地球環境学研究所)、座長:氷見山 幸夫(北海道教育大学名誉教授)

15:30 〜 15:45

[U05-07] 気候変動リスクの部門間相互作用の可視化

★招待講演

*横畠 徳太1田中 克政1仁科 一哉1高橋 潔1江守 正多1木口 雅司2本田 靖4岡田 将誌5井芹 慶彦3眞埼 良光1山本 彬友2重光 雅仁6吉森 正和7末吉 哲雄8岩瀬 健太9花崎 直太1伊藤 昭彦1櫻井 玄5飯泉 仁之直5西森 基貴5Llim Wee Hoo10宮崎 千尋11岡本 章子1鼎 信次郎3沖 大幹2 (1.国立環境研究所、2.東京大学、3.東京工業大学、4.筑波大学、5.農業技術環境研究所、6.海洋研究開発機構、7.北海道大学、8.国立極地研究所、9.野村総合研究所、10.University of Oxford、11.環境情報科学センター)

キーワード:気候変動、影響評価、リスク

気候変動が人間や生態系に及ぼす影響の性質は様々である。人間や生態系にとって好ましくない悪影響(被害)をもたらす一方で、時期や場所によっては、好影響(利益)をもたらすこともある。人間社会が気候変動に対応していくためには、気候変動によって生じるリスク(もたらされる被害や利益)を網羅的に明らかにすることが重要である。気候変動によって生じるリスクは様々な部門にわたり、その時空間スケールも様々である。そして、あるリスクが、別のリスクを引き起こすといった形で、様々なリスクが密接に関係している。このリスクの「連鎖」は、ある部門に閉じることなく、部門を超えて、複数のリスクが関係している。
そこで私たちは、気候変動が引き起こすリスクを、リスク間の因果関係までを含め、網羅的に明らかにすることを目的とした研究を行った。まず、気候変化によって人間社会や生態系において生じる被害や利益を、考えられる限り全ての部門において記述した一覧表を作成した。この一覧表は、気候・水資源・エネルギー・食料・健康・安全・産業・社会・生態系の部門の専門家が、IPCC第5次評価報告書などの文献調査をもとに、将来起こりえる変化を網羅的に記述したものである(「リスク項目」)。さらに、同様の文献調査に基づき、リスク項目の間の因果関係を網羅的に記述したリストを作成した(「リスク因果関係」)。そして、「リスク因果関係」で作成した様々な部門の間のリスクの連鎖を、複雑ネットワークを図化するネットワークグラフ理論(Fruchtman & Reingold アルゴリズム)を用いて可視化した。この結果、様々な気候リスクが、部門を超えて非常に複雑な連鎖をしていることが明らかになった。特徴的な構造として、気候システムの変化が自然システム(水資源や穀物、生態系など)に影響を与え、この変化が社会システム(需要・供給・価格など)に影響を与えることを通して、最終的には人間システム(健康・生命・財産など)に影響が及ぶことが分かった。発表では、部門の間のリスク連鎖の概要や、気候リスクの全体像について議論を行う。