日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

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[U-05] Future Earth - 持続可能な地球へ向けた統合的研究

2016年5月22日(日) 15:30 〜 17:00 301B (3F)

コンビーナ:*氷見山 幸夫(北海道教育大学名誉教授)、岡本 耕平(名古屋大学大学院環境学研究科地理学講座)、安成 哲三(総合地球環境学研究所)、植松 光夫(東京大学大気海洋研究所)、谷口 真人(総合地球環境学研究所)、座長:氷見山 幸夫(北海道教育大学名誉教授)

16:00 〜 16:15

[U05-09] Co-designの試み:気候工学(ジオエンジニアリング)の例をとって

★招待講演

*杉山 昌広1朝山 慎一郎2小杉 隆信3石井 敦4江守 正多5 (1.東京大学政策ビジョン研究センター、2.国立環境研究所社会環境システム研究センター、3.立命館大学政策科学部、4.東北大学東北アジア研究センター、5.国立環境研究所地球環境研究センター)

キーワード:気候工学、超学際研究、共同デザイン

総合的な地球環境研究プログラムのFuture Earthは、地球環境問題の解決につなげるため、研究プロジェクト自体をステークホルダーと協働で進め、自然科学・社会科学・人文学を問わず必要な学術知を総合していく超学際 transdisciplinarity を標榜している。本報告では、JST RISTEXから資金援助を受けて行ったFuture Earth可能性調査の一部を報告する。
気候工学(geoengineering, climate engineering)は人工的に気候システムに介入して地球温暖化の影響を抑える新たな対策である。気候工学は様々な手法の総称で,太陽放射管理(Solar Radiation Management, SRM)とCO2除去(Carbon Dioxide Removal, CDR)に大別される(Royal Society 2009; National Research Council 2015)。気候工学の中でも最も注目されているのがSRMの一種である成層圏エアロゾル注入(Stratospheric Aerosol Injection, SAI)である。大規模火山噴火後の冷却を真似るメカニズムを用い,人工的に粒子状物質を成層圏に散布して地球全体の反射率を高める。気候科学からも注目されており、気候工学を扱ったモデル相互比較プロジェクトGeoMIP6はIPCC第6次評価報告書向けのCMIP6のendorsed MIPの一つになっている。
気候工学は議論の絶えない技術である。研究を進めるにあたっては,一般市民やステークホルダーなど多様な主体の考えや意見を取り入れ,研究開発の方向性を定めていくことが望ましく、Future Earthで叫ばれているtransdisciplinaryな方法が望まれる。しかも技術開発の経路依存性を踏まえると,こうしたアプローチは技術が未熟で開発途上にある現時点から採用するべきである。まさに責任のあるイノベーションが気候工学に求められているのである。
こうした中、気候工学については分野横断型研究,参加型研究も活発になってきている。しかし,既存の研究プロジェクトを振り返ると,研究課題自体は研究者が考案し,あとでステークホルダーが参加するような形態が多い。
そこで,今後の日本の研究課題を考える際に,ステークホルダーとの協働を通じて行うようにした。 手法としては専門家とステークホルダーが協働して研究課題案 research questionsを創出するワークショップ(Sutherland et al. 2011)を採用することとした。ワークショップは2015年7月26日に東京大学本郷キャンパスで実施し、20名弱の専門家,20名弱のステークホルダー(政府関係者,産業界,環境NGO,メディア,他)を招待した。参画者・協力者のネットワークを駆使し,広義の気候ガバナンスに関連する国内の主要なステークホルダーは殆どカバーできたと思われる。参加者には研究課題案のブレインストーミングを依頼し,約600弱を集めることができた。事前整理を経て,7月26日のワークショップで40個の研究課題まで絞り込んだ。絞り込みの過程では似通った研究課題の統合,投票による選別を行った。
ワークショップの成果として得られた40の研究課題は大まかに以下のように分類され、分野横断型の研究課題を多く含み、ステークホルダーの価値を映し出したものになっている。
(1)社会的および経済的な評価:コスト・便益・非経済的な価値
(2)(負の)副作用:リスク・不確実性・政策的な対応
(3)予測、検出、観測および技術的な制御可能性
(4)広範な気候リスク管理における政策アプローチ:緩和・適応・緊急対応
(5)屋外実験と技術開発:技術的デザインと社会・政治的な枠組み
(6)実施のガバナンス:法的・政治的・倫理的な課題
(7)社会的および政治的な含意:ジェンダー・コミュニケーション・日本の役割
今回得られた研究課題の一部を取り出し、現在可能性調査のPhase 2を実施しているところである。
プロセスとして見たとき、今回のワークショップは専門家とステークホルダーの相互学習につながったのは間違いない。今後は再帰的に一連の過程を再検討し、今回のワークショップの方式の可能性と限界について検討を加えていく。
参考文献
NRC (National Research Council). (2015). Climate Intervention: Reflecting Sunlight to Cool Earth. The National Academies Press.
Royal Society. (2009). Geoengineering the Climate: Science, Governance and Uncertainty. London: Royal Society.
Sutherland, W. J., Fleishman, E., Mascia, M. B., Pretty, J., & Rudd, M. a. (2011). Methods for collaboratively identifying research priorities and emerging issues in science and policy. Methods in Ecology and Evolution, 2(3), 238–247. doi:10.1111/j.2041-210X.2010.00083.x