13:49 〜 14:02
[U06-02] 航空機観測による気候・地球システム科学研究の推進
★招待講演
キーワード:気候、地球システム、航空機観測、生態系、海洋、火山
本提案は、大気や海洋、海氷・雪氷、陸面・地形・火山、植生などの生態系を含む地球表層圏システムなどの研究に不可欠な航空機を整備し、気候・地球システム科学研究を推進するものである。
文部科学省の科学技術・学術審議会地球観測推進部会がまとめた「我が国における地球観測の実施方針」では、課題解決型の地球観測が重要とされており、特に「気候変動の影響把握やそのメカニズム解明のための地球観測」が緊急の課題とされている。このためには人工衛星・地上・船舶・航空機を統合した観測が重要とされているが、特に航空機は、他の観測手段では難しい多くの物理・化学要素を高精度かつ高時間・空間解像度で機動的かつ直接に観測できるため、プロセスの解明と信頼できる数値モデルの構築に不可欠である。しかしながら、我が国には地球観測専用の航空機が無く、欧米をはじめとする諸外国に比べ航空機観測体制の整備が大きく立ち遅れている。
航空機観測で解明が期待される中心的課題は、気候・地球システムとその変動機構である。気候変動、とりわけ地球温暖化は、二酸化炭素などの温室効果気体による地球の放射バランスの変化が原因で起きる。一方、エアロゾルには温暖化の抑制効果があるが、放射バランスの最大の不確定要因となっている。さらに放射バランスの変化に対する気候システムの応答の最大の不確定要因は雲であり、地球温暖化による集中豪雨や台風の変化も注目されている。航空機による直接観測を衛星観測や我が国の世界最先端の数値モデルと統合することにより、世界をリードする研究が推進できる。アジア域は、PM2.5を含むエアロゾルや温室効果気体のホットスポットであるほか、北西太平洋は世界で最も台風の発生が多い地域であるが、この地域は航空機観測の空白域になっており、航空機観測における日本のリーダーシップが国際的に強く期待されている。
本研究の中心として想定している航空機はMRJである。国産のため改修が容易で、比較的大きなスペースを有するため多くの測器による同時観測が可能である。予算規模は航空機の購入費が60億で、運用費等が年間12億を想定している。年次計画としては、3年間が準備期間で、4年目から本格的な共同利用を開始する予定である。専用の航空機を有することは、長期間の継続および災害発生時に機敏に対応して観測する必要のある研究の両方で利点がある。また、将来現業的に航空機観測を実施できる機関への技術移転のためのノウハウの蓄積も成果目標の1つとすることを考えている。MRJは比較的余裕のあるスペースにより、常時利用できる測器の搭載や相乗り観測も可能となり、これまで経費的に航空機を利用できなかった研究者の参加も見込まれる。
これらを踏まえた観測推進体制としては、共同利用・共同研究拠点である名古屋大学宇宙地球環境研究所の飛翔体観測推進センターが中心となり、外部の支援事務局・機体運営会社の支援のもと、20数名体制で運用する計画である。拠点には全国の専門家からなる航空機観測推進委員会を置き、研究計画の公募・審査・採択・機体運用計画の作成を行う。委員会の下には、研究対象ごとの観測部会を設け、各研究対象を専門とする全国の組織が責任を持って、ユーザーの支援を行うほか、横串として、観測機器開発とデータ公開の作業部会を設ける。このような共同利用・共同研究拠点制度により、継続的・戦略的な測器開発と若手研究者の養成が可能となる。以上の研究体制作りには、様々な分野の研究者との意見交換の場として上記共同利用・共同研究拠点のスキームを利用してきた実績がある。
本研究計画に関しては、国際組織、海外機関や大学から、航空機観測の空白域での貢献、日本の有する最先端の観測技術の継続・発展、台風観測のための北西太平洋域での国際協力などに対して大きな期待が抱かれており、多くのサポートレターが寄せられている。また、COP21のパリ協定では温室効果気体の放出量の報告・検証が国際公約となっており、アジア域における航空機による温室効果気体の高精度の推定(観測)は必須である。
社会的には、これらの観測研究を通じて台風の予測精度の向上や地球温暖化の影響評価研究が進むことにより、自然災害による損失の軽減・環境変動要因の解明と信頼できる予測・水資源管理の改善・生態系の管理・保護の向上などに寄与ができる。
地球観測の専用航空機は、水文学、生態学、海洋・海氷、雪氷、火山・地形ほかの固体地球科学、地表リモートセンシング研究分野でも、アジア域における新しい観測情報の取得のツールを提供し、新分野の開拓に寄与するほか、船舶観測・無人飛行機・数値モデル研究と連携した研究の発展も期待できる。
文部科学省の科学技術・学術審議会地球観測推進部会がまとめた「我が国における地球観測の実施方針」では、課題解決型の地球観測が重要とされており、特に「気候変動の影響把握やそのメカニズム解明のための地球観測」が緊急の課題とされている。このためには人工衛星・地上・船舶・航空機を統合した観測が重要とされているが、特に航空機は、他の観測手段では難しい多くの物理・化学要素を高精度かつ高時間・空間解像度で機動的かつ直接に観測できるため、プロセスの解明と信頼できる数値モデルの構築に不可欠である。しかしながら、我が国には地球観測専用の航空機が無く、欧米をはじめとする諸外国に比べ航空機観測体制の整備が大きく立ち遅れている。
航空機観測で解明が期待される中心的課題は、気候・地球システムとその変動機構である。気候変動、とりわけ地球温暖化は、二酸化炭素などの温室効果気体による地球の放射バランスの変化が原因で起きる。一方、エアロゾルには温暖化の抑制効果があるが、放射バランスの最大の不確定要因となっている。さらに放射バランスの変化に対する気候システムの応答の最大の不確定要因は雲であり、地球温暖化による集中豪雨や台風の変化も注目されている。航空機による直接観測を衛星観測や我が国の世界最先端の数値モデルと統合することにより、世界をリードする研究が推進できる。アジア域は、PM2.5を含むエアロゾルや温室効果気体のホットスポットであるほか、北西太平洋は世界で最も台風の発生が多い地域であるが、この地域は航空機観測の空白域になっており、航空機観測における日本のリーダーシップが国際的に強く期待されている。
本研究の中心として想定している航空機はMRJである。国産のため改修が容易で、比較的大きなスペースを有するため多くの測器による同時観測が可能である。予算規模は航空機の購入費が60億で、運用費等が年間12億を想定している。年次計画としては、3年間が準備期間で、4年目から本格的な共同利用を開始する予定である。専用の航空機を有することは、長期間の継続および災害発生時に機敏に対応して観測する必要のある研究の両方で利点がある。また、将来現業的に航空機観測を実施できる機関への技術移転のためのノウハウの蓄積も成果目標の1つとすることを考えている。MRJは比較的余裕のあるスペースにより、常時利用できる測器の搭載や相乗り観測も可能となり、これまで経費的に航空機を利用できなかった研究者の参加も見込まれる。
これらを踏まえた観測推進体制としては、共同利用・共同研究拠点である名古屋大学宇宙地球環境研究所の飛翔体観測推進センターが中心となり、外部の支援事務局・機体運営会社の支援のもと、20数名体制で運用する計画である。拠点には全国の専門家からなる航空機観測推進委員会を置き、研究計画の公募・審査・採択・機体運用計画の作成を行う。委員会の下には、研究対象ごとの観測部会を設け、各研究対象を専門とする全国の組織が責任を持って、ユーザーの支援を行うほか、横串として、観測機器開発とデータ公開の作業部会を設ける。このような共同利用・共同研究拠点制度により、継続的・戦略的な測器開発と若手研究者の養成が可能となる。以上の研究体制作りには、様々な分野の研究者との意見交換の場として上記共同利用・共同研究拠点のスキームを利用してきた実績がある。
本研究計画に関しては、国際組織、海外機関や大学から、航空機観測の空白域での貢献、日本の有する最先端の観測技術の継続・発展、台風観測のための北西太平洋域での国際協力などに対して大きな期待が抱かれており、多くのサポートレターが寄せられている。また、COP21のパリ協定では温室効果気体の放出量の報告・検証が国際公約となっており、アジア域における航空機による温室効果気体の高精度の推定(観測)は必須である。
社会的には、これらの観測研究を通じて台風の予測精度の向上や地球温暖化の影響評価研究が進むことにより、自然災害による損失の軽減・環境変動要因の解明と信頼できる予測・水資源管理の改善・生態系の管理・保護の向上などに寄与ができる。
地球観測の専用航空機は、水文学、生態学、海洋・海氷、雪氷、火山・地形ほかの固体地球科学、地表リモートセンシング研究分野でも、アジア域における新しい観測情報の取得のツールを提供し、新分野の開拓に寄与するほか、船舶観測・無人飛行機・数値モデル研究と連携した研究の発展も期待できる。