日本地球惑星科学連合2016年大会

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[U-06] 大型研究計画-マスタープラン2017とその先を見据えて

2016年5月24日(火) 13:45 〜 15:20 102 (1F)

コンビーナ:*大久保 修平(東京大学地震研究所)、藤井 良一(名古屋大学)、永原 裕子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、津田 敏隆(京都大学生存圏研究所)、木村 学(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:藤井 良一(名古屋大学)

14:02 〜 14:15

[U06-03] 海陸・掘削統合観測による革新的地震・噴火予測科学
-沈み込み帯の時空間情報科学の挑戦-

★招待講演

*平田 直1木下 正高1篠原 雅尚1渡辺 俊樹1西 弘嗣3山田 泰広5稲垣 史生2村山 雅史4石川 剛志2 (1.東京大学地震研究所、2.海洋研究開発機構高知コア研究所、3.東北大学学術資源研究公開センター、4.高知大学海洋コア総合研究センター、5.海洋研究開発機構海洋掘削科学研究開発センター)

キーワード:地震・火山噴火予測研究、沈み込み帯地球科学、地震・地殻変動観測網、超深度海洋科学掘削、地震・火山噴火予知研究協議会、日本地球掘削科学コンソーシアム

日本は、地球上で最も活動的なプレート収束域に位置する、自然災害「大国」である。海洋地殻が日本列島の下部に沈み込むことで、水や二酸化炭素などの地球や生命にとっての普遍物質が上部マントルや島孤・大陸地殻に還元されている.そこには地殻や生命の進化を駆動する巨大なエネルギー蓄積場が形成されている。その結果発生する巨大地震や津波、火山噴火が、日本国民の安寧と生活・社会基盤を突然に奪う。しかもその発生間隔は世代をはるかに超えた長さであるため、危機感は必ずしも受け継がれない。これらに対する自然科学からの学術的貢献は、その現象を徹底的に記録し、沈み込み帯の地質現象として科学的・包括的にモデル化して後世に知を継承するとともに、これらの切迫度評価や発生予測につなげることであろう。
本研究計画では、日本周辺の沈み込み帯(海溝=島弧=背弧システム)において、「海底・陸域での地震・地殻変動観測網整備」と「超深度掘削による地下圏孔内観測」を軸とした統合観測体制の飛躍的な強化を通して、先進的な島弧形成・発達史、プレート運動とマントルレオロジーによる沈み込み帯のプレート相互作用、マグマ形成・上昇過程、巨大地震断層の固着=滑りサイクルとカップリング、岩石・流体相互作用や流体移動に関連した物理的・化学的過程、深部流体や地下生命圏の動態など、沈み込み帯に固有の地球科学諸現象を解読する。これらの知見を基に、地震発生および火山噴火現象の本質に迫り、地震および火山活動のポテンシャル評価や活動推移予測を実現するための物理モデル構築や事象系統樹を確立する研究を推進し、地震発生・火山噴火の新しい予測科学の創出を目指す。
具体的には、現時点で特に観測が不足している海底とその下の地下圏において、掘削によるサンプルリターンを行うとともに、海底・孔内における列島規模の稠密な地震・地殻変動観測網を整備する。海底ケーブルによるリアルタイム地震津波測地海底観測網は、最大で、全長21,000kmの海底ケーブルによる海底観測点1050点、海底孔内観測点150点の新規整備を想定するが、ケーブルシステムが既設ないし設置予定の海域においても、観測点密度を増すことで、検知能力と空間分解能の大幅な向上を図る。陸域では1万点規模の地震観測を可能とする次世代稠密地震・火山観測システムの整備とそれを活用した集中観測計画により、地震の発生場と活火山の内部構造やダイナミクスの解明を推進する。一方超深度掘削では、今後5年間で、南海トラフ(紀伊半島沖)地震発生帯、同(室戸沖)付加体先端部、日本海溝軸部~アウターライズにおける国際科学掘削(IODP)を重点的に実施し、海底下5kmから震源断層物質を採取するとともに現位置物理化学特性モニタリングを開始し、地震・津波の発生メカニズムや切迫度解明に挑戦する。
本提案の中核をなす地震・火山噴火予測研究は、文部科学省の科学技術・学術審議会により定められた建議「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画の推進について」に基づき、東大地震研をハブとした地震・火山噴火予知研究協議会により実施されている。海底掘削は、J-DESC(日本地球掘削科学コンソーシアム)がIODPの日本代表機関として全国の大学等の要となっているが、今後は実際に研究を国際的に牽引している8機関(東北大、東京大、海洋研究開発機構、筑波大、神戸大、金沢大、静岡大、高知大)を中核とした体制に遂行する。予知研究協議会、J-DESCでは、互いにリエゾン派遣等による人材・情報の流通をさらに活発化していくことが合意された。
海底・陸上での地震・地殻変動観測網整備を軸とした観測体制の飛躍的な強化に加えて、海底での超深度掘削と能動探査・孔内連続観測を統合し、水平+垂直展開による時空間(広域+局所)スケールでモデル解析を行うことにより、地震・火山噴火現象の動態描像が初めて可能となる。島弧の詳細な地下構造探査によりプレート形状、プレート境界カップリングの空間分布を把握し、プレート運動による載荷や巨大地震後の除荷に対する地殻応答の観測データ、掘削試料を用いた地震・津波履歴を合わせてモデル化し、海溝型巨大地震や非地震性滑りの発生、内陸活断層や火山への応力蓄積や擾乱を説明できる地震発生シミュレーション研究を行う。これらの成果に、連続観測網から得られるリアルタイム観測データを加えて、世界に先駆けて地震発生および火山噴火の予測科学研究を推進し、人文社会学・工学との連携により、持続可能な環境形成に貢献する。