日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

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[U-06] 大型研究計画-マスタープラン2017とその先を見据えて

2016年5月24日(火) 13:45 〜 15:20 102 (1F)

コンビーナ:*大久保 修平(東京大学地震研究所)、藤井 良一(名古屋大学)、永原 裕子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、津田 敏隆(京都大学生存圏研究所)、木村 学(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:藤井 良一(名古屋大学)

14:15 〜 14:28

[U06-04] 深海アルゴフロートの全球展開による気候・生態系変動予測の高精度化

★招待講演

*日比谷 紀之1 (1.東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)

キーワード:深海アルゴフロート、深海混合、深層海洋循環、気候変動予測、古環境変動、海洋生物資源

近年の地球温暖化の進行に伴って、海洋中の貧酸素化、酸性化の問題が進行している。さらには、地球温暖化の影響が、すでに深層海洋にも現れているという可能性も否定できず、もし、それが事実だとすれば、長期的かつ不可逆的な地球環境変動/海洋環境変動に繋がっていく可能性もある。深層海洋循環が弱化すると4℃を超える温度変化がグローバルにもたらされるとともに、20%にも及ぶグローバルな海洋生物生産の減少がもたらされるという最近の数値シミュレーションの結果もある。長期にわたる不可逆的な地球環境変動/海洋環境変動に繋がる可能性が強いにもかかわらず、依然、未解明のまま残されている深層海洋の実態を把握することは、今後の地球環境変化予測そして海洋生態系の応答を予想する上で、必要不可欠な課題である。

今回、日本海洋学会が中心となり、水産・海洋科学研究連絡協議会関連学協会16学会、日本古生物学会と共同で提出する本研究計画は、上述した観点から、過去および将来の気候変動/地球環境変動を数値モデルで再現する上でボトルネックとなっている深海の実態解明を図る。具体的には、深層における循環を解明する上で最も不確定性の強い深海乱流強度の把握を目的に、現在、南大洋で10数台稼働している深海アルゴフロート(到達深度:約4000メートル)“Deep NINJA”の温度・塩分センサーに加え、新たに乱流センサーを装着し、約 1000台を世界展開することで、表層から底層に至るまでの温度/塩分、および、深海乱流の強度分布の観測を行う。さらに、これらの測定データを我が国が誇る超高速計算機の使用を前提とした大気海洋結合モデルに組み込むことで古気候の再現、気候変動の将来予測を画期的に高精度化していく。特に、古気候の下で再現された海洋環境変動に対する生物の応答に関しては、海底コア化石試料のデータなど、古生物学的なデータから情報を取得できるので、この情報を将来の気候変動予測/海洋環境予測の情報とあわせることで、食糧問題と密接に関係する将来の海洋生産/生物資源のアセスメントを従来とは比較にならない程の高精度で実行していく予定である。