15:30 〜 15:43
[U06-09] 飛行艇を用いた新しい地球惑星科学の創成
★招待講演
キーワード:飛行艇、マスタープラン2017「大型研究計画」
本研究グループは、学術目的に共同利用出来る「飛行艇」を日本に導入し、これを地球惑星科学分野を中心に活用することを構想している。本講演ではその概要と、実現の際に得られる大きなメリットについてご紹介したい。ここで言う飛行艇とは、新明和工業製US-2(全長33.3 m)に代表されるような大型飛行艇のことであり、時速400-500 km/h前後で空中を飛行する航空機の性能と、海洋上の任意の場所に離着水して、海面上で各種観測作業を実現する船舶の性能を併せ持つ。特にUS-2の場合、その離着水距離は300 m前後で済むため、海洋はもちろん、湖沼観測や極域の観測にも使用出来る。また船舶でも観測を断念する波高3 mの海況で離着水出来る。もし東シナ海大陸棚海底から突発的にガスが噴出し、大量の気泡が海面上に到達しているのが発見されたとしても、飛行艇があれば、発見から数日以内に現場海域に着水してガス試料採取や各種観測を実現し、噴出の原因や影響を解明することが出来る。一方、国内の観測船を利用して観測する場合は、現場到着まで一ヶ月以上かかっても不思議では無い。これは「海底からのガス噴出」を、「宇宙からの隕石の落下」や「座礁した大型タンカーからの原油流出」に置き換えても同様のことが言える。
想定される新しい観測の具体例としては、上記のような、①突発イベント(地震や火山噴火、隕石落下、タンカー座礁、油田事故、原発事故等)発生直後の即応観測がまず第一に挙げられるが、それだけでは無い。他にも、②海洋定点における繰り返し観測、③陸上の大型・特殊分析機器や施設を用いた不安定物質(プランクトンや微生物等を含む)の定量、④島嶼部(噴火中の火山島を含む)や流氷の上陸観測、⑤台風・竜巻観測、⑥大型海洋生物や特定水塊、漂流ゴミなどの追跡観測、⑦長期観測装置(Argoや地震計など)の広域同時設置・回収、⑧人工衛星を用いた海洋観測の補完、⑨沿岸都市計画・防災研究等が挙げられる。これらは、船舶や航空機では実現が困難であるか、実質的に実現不可能だった観測ばかりで、飛行艇の導入によって世界初の観測が実現する。もちろん単に航空機として利用することも可能で、しかも低速・低空飛行可能な飛行艇の方が、高速・高高度飛行を余儀なくされる一般のジェット機より、対流圏や接地境界層の観測に都合が良い。
さらに飛行艇は、現状では船舶を用いて約一ヶ月かかる海洋観測を、半日で終了させることが出来る。大学教員を中心に長期出張を実現することは年々困難になって来ており、観測所要時間や出張所要時間の削減は国内の観測研究のポテンシャルを維持・発展させるのに必須である。また、実験室レベルで高い分析・解析技術を保有する分野外の研究者の参入を容易にすることになるため、国内の地球惑星科学コミュニティ全体にその利益を還元することも出来る。
飛行艇を利用した地球惑星科学研究は世界に前例が無く、従って「欧米ではあたりまえ」が導入の口実としては使えない。しかし日本の飛行艇建造技術は世界一の水準にあり、飛行艇を学術研究に導入出来るポテンシャルが最も高いのは日本である。また四方を海に囲まれた日本は、迅速な移動による海洋観測へのニーズが最も高い。さらに東アジア諸国の台頭も顕著で、研究船の数に勝る相手に先んじて成果を挙げるには、機動力を高めるより他に手は無い。世界に前例が無いことは、導入の促進要因となっても、障害となるべきでは無く、高い優先度で飛行艇を導入すべきである。
課題は金額であり、初期投資で200億円程度が必要となる。ただしこれは大型観測船と同レベルであり、「ちきゅう」や「はやぶさ2」より安い。また大型観測船なら30名以上、「ちきゅう」なら100名以上の乗員が運航に必要となるが、飛行艇は3名で済むため、長期的な運用コストは一般の観測船より安く済ませられる。現在同志と実現のためのアイデアを広く募集しているので、希望される方は遠慮無く角皆に声を掛けて欲しい。
想定される新しい観測の具体例としては、上記のような、①突発イベント(地震や火山噴火、隕石落下、タンカー座礁、油田事故、原発事故等)発生直後の即応観測がまず第一に挙げられるが、それだけでは無い。他にも、②海洋定点における繰り返し観測、③陸上の大型・特殊分析機器や施設を用いた不安定物質(プランクトンや微生物等を含む)の定量、④島嶼部(噴火中の火山島を含む)や流氷の上陸観測、⑤台風・竜巻観測、⑥大型海洋生物や特定水塊、漂流ゴミなどの追跡観測、⑦長期観測装置(Argoや地震計など)の広域同時設置・回収、⑧人工衛星を用いた海洋観測の補完、⑨沿岸都市計画・防災研究等が挙げられる。これらは、船舶や航空機では実現が困難であるか、実質的に実現不可能だった観測ばかりで、飛行艇の導入によって世界初の観測が実現する。もちろん単に航空機として利用することも可能で、しかも低速・低空飛行可能な飛行艇の方が、高速・高高度飛行を余儀なくされる一般のジェット機より、対流圏や接地境界層の観測に都合が良い。
さらに飛行艇は、現状では船舶を用いて約一ヶ月かかる海洋観測を、半日で終了させることが出来る。大学教員を中心に長期出張を実現することは年々困難になって来ており、観測所要時間や出張所要時間の削減は国内の観測研究のポテンシャルを維持・発展させるのに必須である。また、実験室レベルで高い分析・解析技術を保有する分野外の研究者の参入を容易にすることになるため、国内の地球惑星科学コミュニティ全体にその利益を還元することも出来る。
飛行艇を利用した地球惑星科学研究は世界に前例が無く、従って「欧米ではあたりまえ」が導入の口実としては使えない。しかし日本の飛行艇建造技術は世界一の水準にあり、飛行艇を学術研究に導入出来るポテンシャルが最も高いのは日本である。また四方を海に囲まれた日本は、迅速な移動による海洋観測へのニーズが最も高い。さらに東アジア諸国の台頭も顕著で、研究船の数に勝る相手に先んじて成果を挙げるには、機動力を高めるより他に手は無い。世界に前例が無いことは、導入の促進要因となっても、障害となるべきでは無く、高い優先度で飛行艇を導入すべきである。
課題は金額であり、初期投資で200億円程度が必要となる。ただしこれは大型観測船と同レベルであり、「ちきゅう」や「はやぶさ2」より安い。また大型観測船なら30名以上、「ちきゅう」なら100名以上の乗員が運航に必要となるが、飛行艇は3名で済むため、長期的な運用コストは一般の観測船より安く済ませられる。現在同志と実現のためのアイデアを広く募集しているので、希望される方は遠慮無く角皆に声を掛けて欲しい。