16:35 〜 16:48
[U06-14] 集中豪雨に伴う生態系の撹乱とレジームシフト
★招待講演
キーワード:湖沼、河川、湿原、森林、レジリエンス
生態系の安定性と予測可能性は人類の安全と持続にとって根本的な問題である。近年、多くの淡水生態系が極端な気候現象によって急激な攪乱を受けており、それらのうちには未だ回復していないものもある。気候の温暖化は、生態系に対する一方向への長期にわたるストレスを伴うような極端な気候現象を増大かつ増幅させている。社会的な要求として、極端な気候現象に対応した生態系の潜在的な損傷や復元性に関する実用的なガイドラインの必要性が増しているが、十分な観測や理論が不足していることから現段階における我々の知見は限定的なものでしかない。土木学会など他学会との協力のもとに日本陸水学会によって先導される本プロジェクト研究は、SNSを活用した集約的な監視を行うことによって、極端な気候現象と一方向への長期的な気候変化が淡水生態系に及ぼす影響を評価することを目的としている。特に、異なった滞留時間を有するさまざまな生態系が、衝撃の大きなものから小さいものまで、異なったレベルでの攪乱を受けると思われる集中豪雨の影響に着目している。この大型プロジェクト研究は、同時に、一方向への気候変化に伴った生態系の質的変化やレジームシフトを長期モニタリングから感知することも意図している。プロジェクト研究の拠点は滋賀県立大学に置き、観測データをリアルタイムで受発信できるようにする。モニタリングサイトを日本全国の都道府県にある河川や湖沼、湿地帯(例えば琵琶湖や尾瀬沼、王滝川集水域、物部川)など選択した場所に設置し、学会員や関連した地域の人々が潜在的なレジームシフトや急激な変化を監視する。集中豪雨による極端現象の増加は地球規模での環境問題であり、生態系の量的および質的な変化は世界中の人々に災害をもたらしている。例えば、洪水は地域の生物種を他の場所へ輸送し、時には地域の植生や景観を破壊し、その結果として 微生物・昆虫・魚などにより構成される食物網が我々に提供する生態系サービスを低下させる可能性もある。もし我々が信頼できるデータを持ち合わせなければ、洪水の後に行政が元の生態系を復元することができない。何よりもまして極端な現象の前後における環境の体系的な記載が必要である。このような現象の規模と緊急性からして、この問題に正面から取り組むことが日本陸水学会の責務であると考えている。5年間のプロジェクト研究を通して、学会としては研究者と住民の協調的なネットワークを組織し、非常に大きな攪乱を受ける生態系の最新情報を発信するために本観測システムを開発しようと考えている。
http://www.jslim.jp/
http://www.jslim.jp/