日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS06] 大気化学

2018年5月24日(木) 13:45 〜 15:15 A05 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院、共同)、江口 菜穂(Kyushu University)、座長:峰島 知芳(国際基督教大学)、滝川 雅之(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

14:30 〜 14:45

[AAS06-19] 三酸素同位体組成を指標に用いた都市域における亜硝酸ガスの挙動および起源推定

*丁 トウ1頴川 叶侑2中川 書子1角皆 潤1野口 泉3山口 高志3 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.名古屋大学理学部地球惑星科学科、3.北海道立総合研究機構環境科学研究センター)

キーワード:亜硝酸ガス、三酸素同位体

亜硝酸ガス(HONO)は大気中の微量成分であり、その濃度は都市大気中でも数ppbv程度に過ぎない。しかし日中は光分解反応によりOHラジカルを放出して、多様な光化学反応を駆動するため、HONOの大気中での挙動や起源を把握することは非常に重要である。HONOの発生源には、自動車や工場の排気ガス、土壌からの放出などの直接排出過程と、大気中の窒素酸化物の気相均一反応や、エアロゾル表面や地表面における不均一反応に由来する二次生成過程が挙げられる。しかし、大気中のHONOの起源は未だに明らかにはなっておらず、その濃度の時間変化のメカニズムについても、未だに議論がある。そこで本研究は、近年定量化できるようになったHONOの三酸素同位体組成(Δ17O)を指標に用いて、都市大気中のHONO濃度の時間変化の原因を考察したうえ、二次生成由来のHONOの寄与率を見積もることに挑戦した。

都市大気の観測は、名古屋市及び札幌市の二地点で行い、季節別に数回行った。大気中のHONOは、フィルターパック法を用いて捕集した。HONOの生成過程は日射量などの条件の違いによって時間変化すると考えられることから、本研究では1日を6つの時間帯に分けて大気試料の採取が行えるように、時間分画型自動大気サンプリング装置を作成した。大気試料は10L/minの吸引速度で3~7日間採取し、フィルター上に捕集されたHONO由来のNO2-は超純水に抽出し、アジ化水素と反応させてN2Oに定量的に還元し、さらに熱分解によってO2に変化させ、連続フロー型質量分析計に導入してΔ17O値を定量した。
都市大気HONOのΔ17O値には日変化が見られ、日出に伴って徐々に増大し、日没後減少する傾向が見られた。日中のΔ17O値の増大は、日射によって二次生成速度が高まったためと考えられる。一方、大気HONOのΔ17O値には明瞭な季節変化は見られなかった。二地点間のΔ17O値には明瞭な差が見られ、名古屋のΔ17O値は札幌に比べて高いことから、名古屋の方が二次生成過程の寄与率(例えばNO2由来のHONOの割合)が高いことが分かった。二次生成由来のHONOのΔ17O値がNO2のΔ17O値と等しいと仮定して、二次生成由来のHONO割合を算出したところ、名古屋では30~100%、札幌では20~50%であった。