日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS06] 大気化学

2018年5月23日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院、共同)、江口 菜穂(Kyushu University)

[AAS06-P27] 地上設置型 FTIR による HCFC-22, HCFC-142b 及び HFC-23 の観測

*武田 真憲1中島 英彰2,1村田 功1長浜 智生3森野 勇2 (1.東北大学 大学院環境科学研究科、2.国立研究開発法人 国立環境研究所、3.名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

キーワード:フーリエ変換赤外分光器、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、温室効果ガス、南極昭和基地

我々のグループでは2007年に南極昭和基地(69.0°S, 39.6°E)にフーリエ変換赤外分光器(FTIR)(Bruker社製IFS120M型)を設置し, 2007, 2011, 2016年に太陽光を光源とした大気微量成分の赤外吸収スペクトル観測を実施した. FTIRで取得されるスペクトル領域(2-15µm)には対流圏及び成層圏に存在する多種の微量気体の濃度情報が含まれているため, FTIRはオゾン層破壊に関連した微量気体や温室効果気体のモニタリングに対して大きく貢献できる. 大気組成変化モニタリングネットワーク(NDACC)では地上設置型FTIRにおける温室効果ガスの観測に力を入れており, 強力な温室効果を有するクロロフルオロカーボン類(CFCs)やハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFCs)の鉛直分布のリトリーバルに成功している(Zander et al., 2005; Zhou et al., 2016, Mahieu et al., 2016). また, 近年大気中への放出が急増している代替フロンのハイドロフルオロカーボン類(HFCs)についても衛星搭載型FTIR(ACE-FTS)で取得されたスペクトルからリトリーバル可能であることが示されている(Harrison et al., 2012).

本研究では, 2007年から2016年までに昭和基地で観測された赤外吸収スペクトルに対してインバージョン解析を行い, CHF2Cl(HCFC-22), CH3CClF2(HCFC-142b)及びCHF3(HFC-23)鉛直プロファイルのリトリーバルを試みた. 解析にはロジャーズの最適推定法(Rodgers, 2000)を基に開発されたSFIT4インバージョン解析プログラムを使用した. 解析に必要となるHCFC-22, HCFC-142b及びHFC-23の吸収線パラメータにはNASA/JPLのG. C. Toon氏が提供するPseudo-Line-Lists(PLL)を用いた. 解析の結果, 昭和基地上空のHCFC-142bの気柱全量は2011年まで約6%/yearの増加トレンドを示したが, 以降は減少していることがわかった. 一方で, HCFC-22とHFC-23の気柱全量のトレンドは2007年から2016年までの期間でそれぞれ約4%/year, 約5%/yearの割合で増加しており, 現在も大気中濃度が増え続けていることが示された. さらに, 日本の陸別(43.46°N, 143.77°E)に設置されているFTIRで取得されたスペクトルからもHCFC-22, HCFC-142bとHFC-23のリトリーバルを行い, NOAA/ESRLが実施している地上観測及びフラスコサンプリングによる測定結果と比較, 議論する予定である.

参考文献
Harrison et al., J. Geophys. Res., 117, D05308, 2012.
Mahieu et al., J. Quant. Spectrosc. Radiat. Transf., 186, 96-105, 2016.
Rodgers, C. D., Inverse methods for atmospheric sounding – Theory and practice, World Scientific, Singapore, 2000.
Zander et al., Environ. Sci., 2, 295–303, 2005.
Zhou et al., Atmos. Meas. Tech., 9, 5621-5636, 2016.