日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS06] 大気化学

2018年5月23日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院、共同)、江口 菜穂(Kyushu University)

[AAS06-P28] FTIRで観測されたつくばにおける硫化カルボニル(OCS)の増加

*村田 功1中島 英彰2森野 勇2 (1.東北大学大学院環境科学研究科、2.国立環境研究所)

キーワード:フーリエ変換型分光計、硫化カルボニル、経年変化

東北大学と国立環境研究所では、国立環境研究所所有の高分解能フーリエ変換型赤外分光計(FTIR)を用いて、つくばにおいて1998年12月より大気微量成分の地上観測を行っている。今回はOCSについて報告する。
OCSは硫黄の主な供給源のひとつであり、成層圏に定常的に存在するユンゲ層と呼ばれるエアロゾル層の供給源となる物質である。また、OCSは光合成時に吸収されるが呼吸では排出されないことからCO2の光合成・呼吸による変化の指標にもなる。発生源は海洋、湿地、火山等から放出が多く、自然減が主であるが、パルプ生産、バイオマス燃焼、レーヨン生成過程などの人口排出源も3割程度あるという話もあり、不明な部分も多い。
近年成層圏のエアロゾルが増加しているという報告があり、OCSも増加しているという観測結果がある。成層圏エアロゾルは太陽放射を反射するため、その増加は地球温暖化を抑制する働きがあると考えられ、そういった面からOCSの経年変化も注目されている。そのためFTIR観測の国際的グループである大気成分変動観測ネットワーク赤外観測グループ(NDACC/IRWG)でも各観測点のデータを集めて解析を進めている。特にFTIRでは地上観測からある程度成層圏の情報も得られるため、その点に期待されている。我々もつくばの観測結果を提供している。解析にはロジャーズ法を用いたスペクトルフィッティングプログラムSFIT4を使用し、OCSは5ミクロン付近の5つの波長帯を組み合わせてカラム全量および成層圏・対流圏に分けたカラムを導出している。
これまで2001年以降の観測スペクトルの解析を行った。残念ながら観測モードの関係で途中にかなりの欠測期間があるものの、カラム全量および対流圏カラムでは2002年頃に比べて2010年以降は高い値を示しており、やはりつくばでも増加傾向が見られている。NDACC/IRWGの他の20地点ほどの観測でもおおむね増加傾向が見られており、全球的に対流圏のOCSは増加しているようである。一方、成層圏カラムでは、南半球で増加傾向が見られるのに対し、北半球では増加傾向の地点もあればつくばを含め減少傾向が見られる地点もあり、複雑な様相が見られている。