日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS06] 大気化学

2018年5月23日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院、共同)、江口 菜穂(Kyushu University)

[AAS06-P31] 都市郊外にて観測されたオゾン反応性の温度依存性

*松本 淳1 (1.早稲田大学人間科学学術院)

キーワード:生物起源揮発性有機化合物、実大気観測、放出

生物起源揮発性有機化合物 BVOCs は二次有機エアロゾル SOA や対流圏オゾン O3 の前駆体として注目される。BVOCs の多くは C=C 二重結合を有するため O3 との反応が重要となる。我々は、BVOCs の包括把握を目指し、オゾン反応性 RO3 (= Σ ki [VOC(i)] ) の測定装置(RO3 計)を構築してきた[1,2]。BVOCs 混合試料の RO3 は、O3 添加時の BVOCs+O3 反応に伴う O3 減少を高精度に測定して定量する。O3 と反応しないアルカンの影響は受けない。これまでに、植物放出 BVOCs の RO3 としての測定実験に成功した[1,2]。また、RO3 計の改良により検出下限 2 x 10-5 s-1S/N = 3, 60 秒積算)を実現したうえで、VOC+O3 の反応速度定数について温度依存性の測定を試みた[3,4]。今後はRO3 計を用いた森林大気BVOCs 把握の実現が目標である。そこで本研究では、都市郊外に位置する早稲田大学所沢キャンパス(埼玉県所沢市)において、実大気のオゾン反応性観測試験を実施したので報告する。高速応答 O3 計CLD-O3 を中心とした実験系を構築し、BVOCs 反応時の O3 減少率を実時間分析した。一定量の O3 を試料に添加した時と、清浄空気に添加した際との O3 濃度比から、RO3 を算出した。O3 初期濃度の変動と水蒸気の影響を考慮するため、CLD-O3 を 2 台用いて反応管前後で同時に O3 を測った。二次生成 OH の影響を抑制するため、シクロヘキサンをスキャベンジャーとして添加した。共存 NO の寄与は、NO 標準添加実験の結果を考慮して補正した[5]。観測は、2016/7/6-7, 2017/4/30, 5/3, 7/19, 20, 21 の各日に実施した。外気は配管を通して室内の RO3 計に導入した。今回観測された事例では、NO が低く気温が特に高かった夏季日中に、気温変化を反映するような RO3 変動が見られた一方で、春季や夏季曇天時など気温の高くない状況では、RO3 を有意に捕捉できなかった。今回の観測期間中に補足された RO3 値と気温(所沢市内のアメダスデータ)との相関関係を調べたところ、気温の上昇に伴う RO3 増加が見られた(Fig.1)。植物由来 BVOCs については、樹種や成分によっては放出量が気温に支配されるものがあり、今回の RO3 観測結果(Fig.1)は、BVOCs 放出量の温度依存を反映したものと推測される。 
【謝辞】 本研究は、科学研究費助成事業 17K20048, 早稲田大学特定課題研究助成費 2017K-286 の助成を受けた。
【参考文献等】1) Jun Matsumoto (2014). Aerosol and Air Quality Research, 14: 197-206.; 2) 松本淳 (2014). エアロゾル研究, 29(S1), 47-54.; 3) Jun Matsumoto (2016). Chemistry Letters, 45, 1102-1104.; 4) Jun Matsumoto (2016). IGAC2016 Science Conference, 4.05.; 5) Jun Matsumoto and Roberto Sommariva (2017). JpGU-AGU Joint Meeting 2017, AAS11-P01.