09:00 〜 09:15
[ACC28-01] SfM-MVS技術と空中写真を用いた山間地における積雪深推定に向けた検討
キーワード:SfM-MVS、空中写真、積雪深、山間地、地上基準点(GCP)
はじめに:山間地における積雪は,水資源として重要な役割を果たしており,その資源量の把握には積雪水量の推定が欠かせない.積雪水量は積雪深と積雪密度から求められるため,積雪深は重要なファクターである.また,山岳地域の積雪量は環境変動の指標でもあり,その経年的な変化を把握することは,山岳地の環境変動を考えるうえでも重要である.しかしながら,積雪深を広域的にサブメートル精度で把握することは容易ではない.積雪期と無積雪期の航空レーザ計測データの差分により積雪深を推定する事例はこれまでに多数報告されているが(例えば,北原ほか,2005;Deems et al., 2006;秋山ほか,2009など),この手法はコストが大きい.また,近年は無人航空機(UAV)とSfM-MVSを併用した積雪深や雪崩層厚の把握事例もあるが(内山ほか,2014;Jagt et al., 2015;松山ほか,2016など),計測範囲が限られるうえ,一般的には地上基準点(GCP)を現地に設置・観測する必要がある.そこで本研究では,積雪期の山間地を航空機で撮影した空中写真を用いて,現地でのGCP観測を行わずに,SfM-MVS技術によりどのくらいの位置精度でDSMが作成できるかを検討した.
研究手法と結果:積雪期の空中写真として,2004年新潟県中越地震からおよそ半年後の2005年3月と4月に撮影された,新潟県長岡市山古志地区の空中写真を用い,SfMソフト(PhotoScan Pro)によりオルソ画像及びDSMを作成した.GCPの取得は,2005年4~6月(無積雪期)にかけて計測された航空レーザデータの簡易オルソ画像とDEMを用いた.GCPは空中写真中の積雪のない地上で取得し,(1)理想的な配置を重視し,自然地物も対象とする,(2)理想的な配置は無視し,人工地物のみを対象とする,という2つの配置パターンをテストした.このGCPとは別に,航空レーザデータから位置座標を取得した検証点を9点設置し,オルソ画像及びDSMの位置精度を検証した.その結果,雪に覆われた範囲が広い3月の空中写真の高さ精度は,パターン(2)の方が良好な結果となり,検証点での較差のRMSEは約2.1mであった.雪に覆われた範囲が比較的狭い4月の空中写真での高さ精度は,パターン(1)の方が良好であり,検証点での較差のRMSEは約0.1mであった.ただし,パターン(2)でも約0.2mであり,3月のケースに比べて圧倒的に誤差が小さくなった.
まとめと課題:上記の結果は,山間地において雪に覆われた範囲が広く,GCPの取得が困難な場合は,GCPの理想的な配置は考慮せず,位置が確定しやすい人工地物をGCPとして取得することが望ましいこと,また,雪に覆われた範囲が狭く,GCPの取得が比較的容易な場合は,位置が確定しやすい人工地物でGCPを取得しつつも,その配置が不十分な場合は自然地物で補うことが望ましいことを示していると考える.ただし,前者では積雪深を求めるには高さ精度が不十分であり,今後さらなる検討が必要である.また,現地での積雪深データが入手できれば,それとの比較検証も実施したい.
謝辞:本研究における解析は,2017年度国土地理院職場体験実習の一環として,後藤優太氏(東北大学),岡田浩平氏(筑波大学大学院)に協力して頂いたものである.各氏並びに派遣に便宜を図って頂いた各大学の関係者の方々に深く感謝致します.
引用文献: 北原ほか(2005):航空レーザ測量を用いた積雪深計測作業,国土地理院時報,107,65-69.;Deems et al. (2006): Fractal Distribution of Snow Depth from Lidar Data. Jounal of Hydrometeorology, 7, 285-297.;秋山ほか(2009):航空レーザ測量を用いた山地積雪深の計測と積雪深分布の地形的特徴.日本雪工学会誌,25(3),3-11.;内山ほか(2014):SfMによる積雪環境の三次元モデリングと積雪深推定.雪氷研究大会(2014)講演要旨集.;Jagt et al. (2015): Snow Depth Retrieval with UAS Using Photogrammetric Techniques. Geosciences 2015, 5, 264-285.;松山ほか(2016):小型無人航空機(UAV)を用いた積雪深分布の推定と検証-新潟県巻機山周辺を事例に-.2016年度日本地理学会秋季学術大会要旨集.
研究手法と結果:積雪期の空中写真として,2004年新潟県中越地震からおよそ半年後の2005年3月と4月に撮影された,新潟県長岡市山古志地区の空中写真を用い,SfMソフト(PhotoScan Pro)によりオルソ画像及びDSMを作成した.GCPの取得は,2005年4~6月(無積雪期)にかけて計測された航空レーザデータの簡易オルソ画像とDEMを用いた.GCPは空中写真中の積雪のない地上で取得し,(1)理想的な配置を重視し,自然地物も対象とする,(2)理想的な配置は無視し,人工地物のみを対象とする,という2つの配置パターンをテストした.このGCPとは別に,航空レーザデータから位置座標を取得した検証点を9点設置し,オルソ画像及びDSMの位置精度を検証した.その結果,雪に覆われた範囲が広い3月の空中写真の高さ精度は,パターン(2)の方が良好な結果となり,検証点での較差のRMSEは約2.1mであった.雪に覆われた範囲が比較的狭い4月の空中写真での高さ精度は,パターン(1)の方が良好であり,検証点での較差のRMSEは約0.1mであった.ただし,パターン(2)でも約0.2mであり,3月のケースに比べて圧倒的に誤差が小さくなった.
まとめと課題:上記の結果は,山間地において雪に覆われた範囲が広く,GCPの取得が困難な場合は,GCPの理想的な配置は考慮せず,位置が確定しやすい人工地物をGCPとして取得することが望ましいこと,また,雪に覆われた範囲が狭く,GCPの取得が比較的容易な場合は,位置が確定しやすい人工地物でGCPを取得しつつも,その配置が不十分な場合は自然地物で補うことが望ましいことを示していると考える.ただし,前者では積雪深を求めるには高さ精度が不十分であり,今後さらなる検討が必要である.また,現地での積雪深データが入手できれば,それとの比較検証も実施したい.
謝辞:本研究における解析は,2017年度国土地理院職場体験実習の一環として,後藤優太氏(東北大学),岡田浩平氏(筑波大学大学院)に協力して頂いたものである.各氏並びに派遣に便宜を図って頂いた各大学の関係者の方々に深く感謝致します.
引用文献: 北原ほか(2005):航空レーザ測量を用いた積雪深計測作業,国土地理院時報,107,65-69.;Deems et al. (2006): Fractal Distribution of Snow Depth from Lidar Data. Jounal of Hydrometeorology, 7, 285-297.;秋山ほか(2009):航空レーザ測量を用いた山地積雪深の計測と積雪深分布の地形的特徴.日本雪工学会誌,25(3),3-11.;内山ほか(2014):SfMによる積雪環境の三次元モデリングと積雪深推定.雪氷研究大会(2014)講演要旨集.;Jagt et al. (2015): Snow Depth Retrieval with UAS Using Photogrammetric Techniques. Geosciences 2015, 5, 264-285.;松山ほか(2016):小型無人航空機(UAV)を用いた積雪深分布の推定と検証-新潟県巻機山周辺を事例に-.2016年度日本地理学会秋季学術大会要旨集.