[ACC28-P09] 霜の形態を決定する環境条件
★招待講演
キーワード:霜、霜害、凍露、TDR
早春と晩秋において、放射冷却によって過冷却に達した農作物に霜が付着することで、細胞凍結が誘引(植氷)され被害に遭うことを霜害という。日本における農作物の霜害被害は決して軽微では無く、2014年の霜害による面積当たりの被害額48.7万円/haは、同年の鳥獣害被害と比べて倍以上に大きい(農林水産省, 2015)。しかし、被害の軽減を図るための、燃焼法や送風ファンといった防霜対策には、労力やコストが非常に掛かるため、連日連夜、予防的に対策講じることは現実的ではない。そのため、霜の発生前に適切適宜な防霜対策を行うための、精度の良い霜害の発生予測が必要とされている。霜は、結露の凍結または水蒸気から氷への相変化などによって、地物(植物・岩石など)の表面上に生成される氷晶であり、様々な発生過程によって生成される。そのため、一概に霜と言っても多様な形態がある。それらの霜の形態のうち、(1)結露が凍結した水霜(凍露)と(2)水蒸気が昇華した白霜(霜)という2つの形態がある。霜害の対象となるのは主に白霜であり、水霜による被害は少ないと報告されている(田沢, 1947)。従って、霜の形態を考慮することで、霜害予測の精度向上が期待できる。しかし、霜の形態を判別可能な手法が無かったため、水霜と白霜の発生条件の特定に至っていない。そこで、物質によって異なる比誘電率(水=80,氷=3.5,空気=1)を測定することで、検知部の接した物質の判別が高精度で可能な、TDR(Time Domain Reflectometry, 時間領域反射)法を用いたTDR霜センサを開発した。TDR霜センサは水霜と白霜の判別が可能であり、このセンサを用いて霜の形態を決定する環境条件の特定を行った。その結果、絶対湿度が発生する霜の形態を決定していることが分かった。絶対湿度が3g/m3以上であると結露の発生から水霜が発生し、絶対湿度が3g/m3以下であると、結露は発生せず水蒸気が昇華して白霜が発生していた。また、気温が十分に低温であっても、絶対湿度が2g/m3以下の場合、乾燥し過ぎているために霜が発生しなかった。従って、絶対湿度が2g/m3以下の場合は霜害ではなく、より作物の被害が重くなりやすい凍害が発生すると考えられた。霜の形態や発生率は周辺環境による絶対湿度の変化に大きな影響を受けていると考えられた。