日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC29] アイスコアと古環境モデリング

2018年5月22日(火) 09:00 〜 10:30 201A (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:植村 立(琉球大学 理学部)、川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所、共同)、竹内 望(千葉大学)、座長:竹内 望(千葉大学)、服部 祥平(東工大)

09:00 〜 09:15

[ACC29-01] ヒマラヤ山脈エベレスト・クンブ氷河ウエスターンクームで掘削された浅層アイスコア中のデブリの起源および消耗域のデブリとの比較

*竹内 望1堀 燿一朗1吉田 稔2藤井 理行3 (1.千葉大学、2.白山工業株式会社、3.国立極地研究所)

キーワード:ヒマラヤ、デブリ氷河、エベレスト

クンブ氷河は,ヒマラヤ山脈の最高峰エベレストの南側を全長約17 kmに渡って流れる大型の谷氷河である.下流部の消耗域は厚いデブリに覆われ,代表的デブリ氷河として数多くの融解プロセスに関する研究が行われてきた.一方,氷河上流部は,アクセスの難しさからほとんど調査は行われたことはなく,氷河の積雪の涵養過程やデブリの取り込み過程はほとんどわかっていない.クンブ氷河の涵養域には,ウエスタンクームと呼ばれる平坦な雪原が広がり,ここでは,1980年に植村直己隊長率いるエベレスト冬季登山隊によって2本の浅層アイスコアが掘削された.コアは,冷凍のまま日本に輸送され,国立極地研究所の低温室に保管された.本研究では,長く解析されずに保管されていたこの2本のアイスコアについて,層位,水安定同位体,化学成分,花粉およびダストの分析を行い,クンブ氷河涵養域の雪氷の物理化学特性,年間涵養量,および氷河の涵養とデブリの供給プロセスを明らかにすることを目的とした.

アイスコアは,標高6000m(Core 1)と,6400m(Core 2)の2か所で掘削されたものである.コアの層位観察の結果,Core 1は比較的融解が少なく,連続的な雪の堆積を示すのに対し,Core 2は,顕著な融解再凍結を経ていることが明らかとなった.また,Core 2では砂や礫を含む顕著なデブリ層が3箇所に存在しした.このことは,Core 2の掘削地周辺は周辺岩壁から雪崩によって涵養されていることを示唆している. XRD分析による鉱物組成から,このデブリはエベレスト南壁起源であることが示唆された.この結果は,Core 2の掘削地点周辺では,エベレスト南壁からの雪崩によって雪が涵養し,同時に南壁由来のデブリが氷河にとりこまれていることを示している.