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[ACC29-07] グリーンランドEGRIP計画における2016~2018年の日本の観測活動及び氷床コア解析
キーワード:グリーンランド、EGRIP、氷床コア掘削・解析
グリーンランド氷床は,近年,夏期の融解が内陸部まで及んだり,海への氷の流出量が増加するなど,急激な変化が生じている.グリーンランド氷床の変動は,海水準変動を招くだけでなく,海洋循環や気候変動の原因ともなるため,そのメカニズムの解明が急務である.グリーンランド氷床の変動メカニズムと過去の気候変動を研究するため,デンマークのコペンハーゲン大学をリーダーとする国際共同掘削プロジェクト「東グリーンランド深層氷床掘削プロジェクト(EGRIP計画)」が2015年から実施されている.EGRIP計画では,従来の掘削地点とは異なり,水平方向の流動速度の大きい北東グリーンランド氷流(North East Greenland Ice Stream)」の上流部で深層掘削を行うことが大きな特徴であり,氷床流動についての新たな知見が得られると期待できる.EGRIP計画では,完新世初期の詳細な気候・環境変動を復元することも大きな目的である.この時代は現在よりも温暖であったと推定されており,温暖化した将来の地球の気候・環境を予測するためのヒントとなる重要な時代であるが,グリーンランド氷床ではこの時代の氷がブリットルゾーンと呼ばれる深度帯にあり,これまで良質の氷床コアが得られなかっため,詳細な化学分析や気体分析を実施することができなかった.EGRIP計画では細心の注意を払って掘削とコアの現場処理を行うことで,良質のコアを得て詳細な分析を実施する.更に,最終氷期に生じた急激な気候変動のメカニズムについても研究を行う計画である. EGRIP計画はデンマーク,日本,アメリカ,ドイツ,ノルウェー,スイスを中心とする国際共同研究により実施されている.日本はArCS (Arctic Challenge for Sustainability) 事業の下でEGRIPに参加しており,日本から2016年に研究者2名がEGRIPでの雪氷観測に参加し,2017年に研究者5名,大学院生1名,掘削技術者1名,新聞記者1名が設営,掘削,コアの現場処理,大気・雪氷観測に参加した.EGRIPコアの一部はスイスのベルン大学に輸送され,2018年2~3月に日本をはじめとする数カ国の研究者・技術者が連続融解分析(CFA)を実施する.日本はブラックカーボンの分析を担当する.JpGUではEGRIPでの氷床コア掘削・現場解析,雪氷・大気観測,ベルン大学におけるEGRIPコアのCFA分析等に関する日本の活動を報告する.また,今後の観測・研究計画を紹介する.