日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC29] アイスコアと古環境モデリング

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 201A (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:植村 立(琉球大学 理学部)、川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所、共同)、竹内 望(千葉大学)、座長:飯塚 芳徳(北海道大学)、中澤 文男(国立極地研究所)

15:30 〜 15:45

[ACC29-13] 地軸の傾きと歳差による北半球高緯度気候変化の季節性と気候-植生フィードバック

*木野 佳音1阿部 彩子1,2大石 龍太1齋藤 冬樹2吉森 正和3 (1.東京大学大気海洋研究所、2.海洋研究開発機構、3.北海道大学)

キーワード:軌道要素、氷期サイクル、気候フィードバック

地球の軌道要素の周期的変化による北半球高緯度の夏の日射量変化が、数千年から数万年スケールの氷床量変動の要因であるとするミランコビッチ理論は広く知られている。近年、気候モデルを用いた様々な数値実験により、過去数十万年間の氷床量変動が再現されたが、気候システムのより高精度な理解のためには、氷床融解にとって重要な夏の気温がどのような気候フィードバックによって決まるか明らかにする必要がある。そこで本研究では、地軸の傾きと歳差・離心率がそれぞれ変化したときに、(1) 高緯度の気温がどのような季節変化をするか、特に氷期サイクルにとって重要な夏の気温がどのような気候フィードバックによって決まるか、(2) 季節の気候フィードバックがどのように異なるかを調べた。その際、最近重要性がわかってきた植生フィードバックの有無に着目した。

大気海洋植生結合モデル (MIROC-LPJ: O’ishi and Abe-Ouchi, 2011) を用いて、過去の実際の時代で実現していた各軌道要素の最大値、最小値および現在値を組み合わせ、境界条件とした感度実験を行い、それぞれの夏の日射量と夏の気温の対応を調べた。さらに、季節の気候フィードバック解析 (Lu and Cai, 2009) を適用した。

結果として、地軸の傾きが異なるときの方が、歳差・離心率が異なるときより北半球高緯度陸において夏の日射量変化に対する夏の気温変化が大きく、これには植生フィードバックの存在が重要であることがわかった。地軸の傾きが変化したときの方が、ツンドラ-北方林境界の遷移に伴う春の植生-雪-アルベド・フィードバックを中心とした気候フィードバックが増幅されることで、年間を通じて気温変化が増幅されることが示唆された。今後は、実際の氷期サイクルのより高精度な理解へ向けて、軌道要素の組み合わせの詳細な比較議論をする必要がある。