日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC29] アイスコアと古環境モデリング

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:植村 立(琉球大学 理学部)、川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所、共同)、竹内 望(千葉大学)

[ACC29-P01] 樹木年輪酸素同位体比を用いた山岳アイスコアの年代決定方法の検討

*對馬 あかね1佐野 雅規 2砂子 宗次朗3Evgeny Podolskiy 4佐藤 洋太3藤田 耕史3 (1.総合地球環境学研究所、2.早稲田大学人間科学学術院、3.名古屋大学大学院環境学研究科、4.北大北極域研究センター)

キーワード:山岳氷河、アイスコア、年代決定

山岳氷河から採取されるアイスコアは陸域で最も高標高域の古気候情報を保持した有能な古気候プロキシである。しかしながら、高標高かつ低・中緯度に存在する山岳氷河は (1)掘削地点の気温が高く融解が生じやすいこと、(2)強風による積雪の再配分も引き起こされやすいこと、(3)複雑な地形のために流動による氷河の歪みが複雑なこと、そして(4) 風向きが変わりやすく水蒸気の供給経路が複雑なことなどから、正確な情報を引き出すことが難しい。そのために、アイスコアの年代を決める際によく用いられる酸素同位体比を用いた年代決定が困難で、復元された古気候情報は数年の誤差を持つ。一方で、降水量や相対湿度などの気候状態を反映して変化する樹木年輪に含まれるセルロースの酸素同位体比は、一年単位の高い時間解像度で気候復元が可能である。本研究では、山岳アイスコアの酸素同位体比と樹木年輪の酸素同位体比の変動パターンとのマッチングによる、極めて誤差の小さい、山岳アイスコアの年代決定方法を検討した。

手法開発のため、はじめに、ネパールロールワリン山域にて2017年8月に年輪試料の採取と10月−11月にかけてアイスコア掘削を試みた。年輪試料はBedingとGyalche周辺の標高3300~3800mで採取した。幹の腐朽によりサンプルの遡及期間は最大でも300年程度であった。アイスコア試料はトランバウ氷河の標高約5800m地点で電動ハンドオーガによる掘削を試みた。この地点はトランバウ氷河の涵養域において人力でアクセスし掘削が可能な最高地点であったが、本年度の調査では質量収支がプラスの値を示していた。そのため、開始直後に融解再凍結氷の中でドリルがスタックしてしまい、掘削できたアイスコアは2.5mに留まった。掘削の失敗を受けて、1998年に西ネパールのヒドゥンバレーのリカサンバ氷河の深さ約15mで掘削された既存のアイスコアを用いて手法の開発を行った。アイスコアの年代はダスト及びトリチウムピークにより決定されており、1662-1998年の36年間をカバーしていることが推定されている。本発表では今年度の調査報告を行うとともに、ヒドゥンバレーアイスコアの年代について議論する。