日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC29] アイスコアと古環境モデリング

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:植村 立(琉球大学 理学部)、川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所、共同)、竹内 望(千葉大学)

[ACC29-P03] 中央アジアパミール及び天山山脈の氷河雪氷中に含まれる鉱物ダストの比較研究

*竹内 俊介1竹内 望1堀 燿一朗1 (1.千葉大学)

キーワード:ダスト、氷河、パミール、天山山脈

雪氷中に含まれるダスト(鉱物粒子)は、過去の大気循環や地表面状態の指標としてアイスコア研究に広く用いられている。乾燥域が広がる中央アジアでは、大気中を浮遊するダスト量が多いことから、この地域で掘削されたアイスコアには、ダストが比較的高濃度で含まれている。アイスコアのダスト濃度についての研究は数多くされてきているが、アイスコア中のダストの鉱物組成や化学・物理的な特徴を分析した研究はほとんどない。そこで本研究では、中央アジアのパミール山域および天山山脈の氷河の積雪中に含まれているダストの特性を分析、比較し、これらの地域のダストの特性の違いの有無を明らかにし、さらに周辺の地表面ダストと比較することにより、それぞれの氷河のダストの供給源を検討することを目的とした。分析を行ったのは、パミール山域のレーニン氷帽、およびフェドチェンコ氷河、天山山脈のウルムチNo.1氷河で採取した積雪ピットサンプル中に含まれるダストである。XRD分析による鉱物組成比とスペクトルメーターによる光学特性の分析の結果、レーニン氷帽とフェドチェンコ氷河のダストは、鉱物組成および反射スペクトルともに類似していた一方、ウルムチNo.1氷河のダストはパミールの氷河のものとは異なっていた。このことは、パミール山域の氷河のダストが共通の供給源であるのに対し、天山山脈の氷河は異なる供給源を持つことを示唆している。レーニン氷帽の積雪中のダストと周辺の地表面ダストを比較した結果、レーニン氷帽の積雪中のダストは、地表面ダストとダストの特性がかなり類似していることが示唆された。このことは、この氷河のダストは氷河周辺の地表面から供給されていることを示唆している。一方、ウルムチNo.1氷河の積雪中のダストは、氷河周辺の地表面ダストと類似していなかった。このことは、ウルムチNo.1氷河に飛来するダストの供給源は、氷河周辺の地表面由来でなく、氷河から遠く離れたアジアの乾燥域であることを示唆している。以上の結果から、同じ中央アジアの氷河でも、パミールと天山ではダストの特性は異なり、それぞれ異なる供給源を持つことが明らかになった。このことは、中央アジアの山岳アイスコア中のダスト濃度の解釈は、各地域の供給源を考慮する必要があることを意味している。