日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG40] 陸域生態系の物質循環

2018年5月24日(木) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:加藤 知道(北海道大学農学研究院)、平野 高司(北海道大学大学院農学研究院)、佐藤 永(海洋研究開発機構 地球表層物質循環研究分野、共同)、平田 竜一(国立環境研究所)

[ACG40-P01] 葉の環境への順化がクロロフィル蛍光・分光反射・光合成の環境応答に与える影響

*辻本 克斗1彦坂 幸毅1 (1.東北大学大学院生命科学研究科)

キーワード:クロロフィル蛍光、リモートセンシング、Photochemical Reflectance Index

陸上植物の光合成による二酸化炭素の吸収(Gross Primary Production; GPP)は、陸域生態系の中で最大の炭素フラックスであり、それを正確に推定することは炭素評価の観点から非常に重要である。GPPを広域に推定する手法の一つに、人工衛星から地球の反射光スペクトルをモニタリングする衛星リモートセンシング法がある。近年、太陽光によって誘起される植生のクロロフィル蛍光(Solar-Induced Fluorescence; SIF)を人工衛星から観測可能であることがわかった。ここでクロロフィル蛍光とは、植物の葉緑体が、光を受けると放出する赤~遠赤色の光であり、その強度は光合成回路の状態を反映するため、SIFはGPPの新たな指標として期待されている。しかし、クロロフィル蛍光は葉に吸収されたエネルギーがたどる3経路(光化学反応、熱放散、蛍光)のひとつであり、光化学反応の収率を正確に推定するには熱放散のパラメーターもリモートセンシング指標から推定する必要がある。また、生態系内の葉は様々な環境に順化して光合成の性質は異なるため、植物群落レベルで観測されるSIFから植生の光合成を正確に推定するには様々な環境に順化した葉の蛍光と光合成、熱放散の特性を調べる必要がある。 本研究では、光順化が光合成、クロロフィル蛍光、熱放散の3つの経路に与える影響を調べることを目的とした。グロースチャンバー内で異なる光環境(強光: 800 µmol photon m-2 s-1, 弱光: 70 µmol photon m-2 s-1)で生育した一年生草本シロザ(Chenopodium album)を対象に、25℃の条件下で光とCO2条件を変えながら光合成、クロロフィル蛍光、熱放散と相関がある分光反射指数Photochemical Reflectance Index (PRI)を同時に測定した。PRIとクロロフィル蛍光から蛍光-光合成モデルを用いて葉の光合成速度を推定し、ガス交換による実測値と比較を行った結果を紹介する。