日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG41] 植物プランクトン増殖に関わる海洋-大気間の生物地球化学

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 106 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:宮崎 雄三(北海道大学低温科学研究所)、西岡 純(北海道大学低温科学研究所)、鈴木 光次(北海道大学、共同)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、座長:宮崎 雄三(北海道大学 低温科学研究所)

13:45 〜 14:00

[ACG41-01] 西部北太平洋の鉄供給システムの解明 -大気由来鉄と海洋循環由来鉄の統合と定量的理解に向けて-

*西岡 純1 (1.北海道大学低温科学研究所)

キーワード:鉄供給、大気ダスト、海洋循環

1990年代後半から2000年代にかけて、北太平洋亜寒帯域東西で実施された鉄散布実験や船上培養実験等によって、広く栄養塩の残存しているこの海域(High Nutrient Low Chlorophyll : HNLC海域)の植物プランクトン増殖は、鉄が不足していることで抑制されていることが明らかになった。また亜熱帯・熱帯海域では窒素固定生物の増殖に鉄の供給が密接に関係していることが報告されている。このため北太平洋の一次生産メカニズムとその変動を理解するには、自然界での鉄の供給過程を明らかにする必要がある。西部北太平洋においては、これまでにいくつかの鉄の供給過程が報告されている。その一つとして、1980年代後半から大陸から大気を通し移送される大気ダストの研究が進み、黄砂、人為起源粒子、火山起源粒子などの大気ダストを介して海洋に鉄が供給されている事実が確認されてきた。一方2000年代以降、海洋内部の正確な鉄濃度が測定されるようになり、データが蓄積され、西部北太平洋でも鉄の詳細な分布が明らかになってきた。その結果によれば、縁辺海の大陸棚起源の鉄が、この海域特有の中層循環と海峡部で起こる混合や冬季混合を通じて西部北太平洋表層に供給されていることも明らかになってきた。鉄不足で制限されているHNLC海域の一次生産活動や栄養塩の季節的変動は、これらすべての鉄供給過程と関連付けて整合的かつ定量的な説明が求められる。本発表では、西部北太平洋の大気経由・海洋循環経由など可能性のある鉄供給過程を整理し、基礎生産過程や栄養塩季節変動などをどのように定量的に説明できるのかを考察する。