日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG41] 植物プランクトン増殖に関わる海洋-大気間の生物地球化学

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 106 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:宮崎 雄三(北海道大学低温科学研究所)、西岡 純(北海道大学低温科学研究所)、鈴木 光次(北海道大学、共同)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、座長:西岡 純(北海道大学 低温科学研究所)

16:45 〜 17:00

[ACG41-12] 石川県九十九湾における海表面マイクロ層起源エアロゾル粒子による氷晶形成

*岩田 歩1Wong Shu-Kuan2岩本 洋子3古家 正規1濱崎 恒二2松木 篤4 (1.金沢大学 自然科学研究科、2.東京大学 大気海洋研究所、3.広島大学 大学院生物圏科学研究科、4.金沢大学 環日本海域環境研究センター)

キーワード:氷晶核、エアロゾル粒子、海面表面マイクロ層

混合相雲中における氷晶の形成にはエアロゾル粒子が核として働くことが不可欠である。とりわけ海洋上で形成される雲中の氷晶形成には海洋起源のエアロゾル粒子の重要性が示唆されている。近年、海水中に含まれる生物由来の有機物が濃縮する海表面マイクロ層(Sea surface microlayer: SML)が多くの氷晶形成物質を含むことが示されてきた。しかしながら海洋由来とりわけSML由来のエアロゾル粒子による氷晶形成の定量的な特性やその比較、時空間的分布の知見は未だ限られている。そこで本研究では2016年11月に石川県九十九湾においてドラムサンプラーを用いてSMLの採取を行った。また本研究ではSML同様に海洋生物起源の有機物の濃縮に由来する冬季日本海特有の現象である波の花の採取を同県真浦海岸にて行った。採取した試料は液滴凍結法にて、その凍結温度および試料中の氷晶形成粒子数濃度を測定した。
凍結実験において採取したSMLおよび波の花は-15.5℃~-24.1℃で凍結し、氷晶形成粒子数濃度は5.4E+4個/L~1.1E+6個/Lであった。これらの凍結温度および氷晶形成粒子数濃度は、これまで北極海や北大西洋で採取されたSMLの凍結実験結果と同程度であった。またSMLおよび波の花の凍結温度および氷晶形成粒子数濃度は、同地点のバルク海水より有意に高い値であった。これらの結果は氷晶形成粒子が海表面マイクロ層に普遍的に濃縮していることを示唆している。さらにSML、波の花およびバルク海水の凍結温度と環境パラメーターとの相関では、クロロフィル濃度とは相関がない一方で、主にタンパク質由来のCoomassie Stained Particles (CSP) 濃度と、主に多糖類由来のTransparent Exopolymer Particles (TEP)濃度と高い相関を示した (Fig. 1)。これらの結果はSMLや波の花に限らず海洋を起源とする粒子による氷晶形成が、タンパク質や多糖などの海洋生物起源の有機物によってもたらされることを示唆している。
また本研究では採取したSMLを室内実験で粒子化し物理計測および捕集することによって、これまで大気中の氷晶核の代表格である鉱物粒子(Arizona Test Dust)との氷晶核能の比較を行った。その結果、少なくとも高い凍結温度を示したSML試料はATDと同程度の氷核活性密度(INAS)を示し、鉱物粒子と同程度の高い氷晶核能をもつことを示唆した。