日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG42] 沿岸海洋生態系─1.水循環と陸海相互作用

2018年5月24日(木) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:杉本 亮(福井県立大学海洋生物資源学部)、小路 淳(広島大学大学院生物圏科学研究科)、山田 誠(龍谷大学経済学部、共同)、藤井 賢彦(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、座長:小路 淳藤井 賢彦

09:45 〜 10:00

[ACG42-03] 岩手県大槌町赤浜沿岸 陸海同時観測:沿岸部地下水の水質、水温、流速測定

*宮下 雄次1本田 尚美2濱元 栄起3小路 淳4杉本 亮5河村 知彦6富永 修5山田 誠7谷口 真人2 (1.神奈川県温泉地学研究所、2.総合地球環境学研究所、3.埼玉県環境科学国際センター、4.広島大学大学院生物圏科学研究科、5.福井県立大学海洋生物資源学部、6.東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター、7.龍谷大学経済学部)

キーワード:地下水流速、塩水楔、地下温度、海底湧出地下水、大槌湾

日本の多くの沿岸域では沖積低地が発達し、被圧帯水層が厚く堆積している。これらの被圧帯水層では、かつては多くの地域で地表面よりも高い水頭を持ち、難透水層を掘りぬいた井戸から地下水が自噴していた。しかし、経済活動の発展と人口集中による水需要の増加に伴い、多くの沿岸地域では深層地下水の利用が増加し、それに伴い自噴域の減少や湧水の枯渇、地下水位の低下に伴う地盤沈下などが顕在化した。一方、近年、沿岸生態系における海底湧出地下水の重要性が認識されるようになり、海域における海底湧出地下水を把握するための調査などが行われるようになった。

そこで本研究では、岩手県大槌町赤浜沿岸部における海底湧出地下水を把握することを目的として、陸域及び海域における同時観測を2017年2月に行った。本報告では主に陸域における観測として、東大国際沿岸海洋研究センター観測井において実施した、深度別の地下水流向流速、採水調査結果について報告する。

2017年2月7日に、10深度でJFEアドバンテック株式会社製地下水流向流速計GFD-3aを用いて地下水の流向流速を測定した。また、地下水流向流速を測定する前に、孔内温度の鉛直分布を測定した。そして、2017年2月8日には、孔内にダブルパッカー式地下水採水器を設置し、6深度で地下水の採取及び測定を行った。採水した地下水は、現地においてpH, 電気伝導度、溶存酸素濃度、酸化還元電位を測定した。また、採取した地下水試料は測定項目別に分取し、総合地球環境学研究所において分析を行った。

観測の結果、地下水は、深度5m~12mまでは、概ね海に向かう方向に流動していた。一方、深度13m以深では、大槌湾の河口から湾外に向かう、赤浜にほぼ並行する東向きに流動していた。一方、地下水の流速は、深度10mまではほぼ測定下限である0.01cm/min以下、深度11m~14mでは0.02~0.06cm/min、孔底付近の深度15mでは1.5cm/minであった。また、深度別に採水した地下水の電気伝導度は420ms/mから4040ms/mまで幅があり、深さ13m以深では2500ms/m以上の高い値を示した。

海水の電気伝導度を5000ms/m、この地域の地下水の値を8ms/mと仮定し、沿岸地下水における海水の混合率を求めた。その結果、深度10mまでは概ね10%以下、深度 11~12mでは13~19%であったのに対し、深度13m以深では50%~80%と汽水状態になっていることが判明した。この深度では、地下水の流動方向が、大槌湾内から湾外に向かう方向に流れていたことから、観測時においては、深度13m以深では海水が陸域側に侵入していると推察された。一方、深度12m以浅では、地下水が海方向に流出していることが実測された。