15:50 〜 16:10
[ACG43-07] サンゴ礁における気泡状酸素の動態とフラックス
★招待講演
キーワード:気泡状酸素、溶存酸素、サンゴ礁、一次生産、酸素フラックス
サンゴ礁は貧栄養の海域にもかかわらず多様な生物が生息し、高い一次生産量を有していることが知られている。サンゴ礁における総有機炭素生産量は700~3000g C m-2 y-1であり(Kinsey 1985)、熱帯雨林のそれと匹敵する。そのため、サンゴ礁では日中に、特に低潮時の礁原や礁池において高い光合成に起因する気泡状酸素の生産と放出が観察される。この気泡状酸素は、一部は溶存酸素となるが、そのまま海面で弾けることによって大気へと放出される。一般に気相-液相間での気体交換によって生じる気体のフラックスは境界面に存在する薄膜中を分子拡散によって気体が侵入または逃散するという薄膜モデル(Liss and Slater 1974)により、大気-海水間の酸素フラックス(Fair-sea)は、次式で計算される。
Fair-sea = k(O2 air eq. – O2 sea)
k:気体交換係数、O2 air eq.:大気平衡時の溶存酸素濃度、O2 sea:海水の溶存酸素濃度
このモデルでは大気中の気体の酸素と海水中の溶存酸素の濃度差によって一義的にフラックスが計算されるため、気泡の酸素が直接海面から放出される量は考慮されていない。気泡状態の酸素は光合成によって生成され、サンゴ礁での過飽和の溶存酸素を支配しているにもかかわらず、どの程度のO2が気泡状態で放出されているのか分かっていない。また、サンゴ礁生物群集による一次生産量の見積もりにおいても、多くの研究が溶存酸素の変化量を算出に用いているため、気泡状酸素として逃散している分だけ一次生産量を過小評価している可能性がある。したがって、本研究では、サンゴ礁において気泡状酸素がどの程度生産され、大気中へ放出されているのか見積もることを目的とする。
瀬底ビーチサンゴ礁内の観測点において、様々な底質に透明なドーム(直径30cmの半球)をかぶせ、底生生物群集から発生する気泡状酸素を捕集した。ドーム内に蓄積した気体をシリンジによって抜き取り、容積を計測したのち、一部はバイアルビン等に分取して気相中の酸素分圧を光学式酸素計(Neo Fox, Ocean Optics)により測定した。
気泡状酸素のフラックス(Fbubble)は次の式によって算出した。
Fbubble = PO2 ×V/(R×T×A×t)
PO2:気体中のO2分圧、V:気体の体積、A:ドーム底の面積、t:培養時間(設置時間)
R:気体定数、T:絶対温度
また、ドーム外側の海水中の溶存酸素を計測し、停留法による底生生物の一次生産速度を見積もった。さらに、大気-海水間の酸素フラックスを計算した。
捕集気体中の酸素分圧は砂礫50.6%、アミジグサ科の褐藻(ウスユキウチワ)43.5%、藍藻(黒色)53.5%、紅藻(無節サンゴモ)50.5%であった。光合成で発生する気泡の酸素分圧は事前に予想した100%ではなかった。これは、気泡状酸素から海水へ一部の酸素が溶解したことと、海水中に初めから溶存している窒素が気泡状酸素へ逃散したことによると考えられる。
底質からのフラックスでは、溶存態+気泡状酸素フラックス(底質からの全フラックス)に対する溶存フラックスの割合は砂礫84.3%、アミジグサ科の褐藻(ウスユキウチワ)79.7%、藍藻(黒色)76.1%、紅藻(無節サンゴモ)88.4%であった。従来の溶存酸素による一次生産速度は観測点周辺で平均13.6 mmol m-2 h-1であり、この値は平均で17.9%過小評価されていることが分かった。
大気-海水間のフラックスでは、薄膜モデル+気泡状酸素フラックス(大気-海水間の全フラックス)に対する薄膜モデルフラックスは砂礫59.2%、アミジグサ科の褐藻(ウスユキウチワ)51.4%、藍藻(黒色)46.3%、紅藻(無節サンゴモ)67.3% であった。従来の薄膜モデルによる大気-海水間の酸素フラックスでは3.68 mmol m-2 h-1の酸素が大気へ逃散する値が得られた。この結果は平均で44.0%過小評価されていることが分かった。
Fair-sea = k(O2 air eq. – O2 sea)
k:気体交換係数、O2 air eq.:大気平衡時の溶存酸素濃度、O2 sea:海水の溶存酸素濃度
このモデルでは大気中の気体の酸素と海水中の溶存酸素の濃度差によって一義的にフラックスが計算されるため、気泡の酸素が直接海面から放出される量は考慮されていない。気泡状態の酸素は光合成によって生成され、サンゴ礁での過飽和の溶存酸素を支配しているにもかかわらず、どの程度のO2が気泡状態で放出されているのか分かっていない。また、サンゴ礁生物群集による一次生産量の見積もりにおいても、多くの研究が溶存酸素の変化量を算出に用いているため、気泡状酸素として逃散している分だけ一次生産量を過小評価している可能性がある。したがって、本研究では、サンゴ礁において気泡状酸素がどの程度生産され、大気中へ放出されているのか見積もることを目的とする。
瀬底ビーチサンゴ礁内の観測点において、様々な底質に透明なドーム(直径30cmの半球)をかぶせ、底生生物群集から発生する気泡状酸素を捕集した。ドーム内に蓄積した気体をシリンジによって抜き取り、容積を計測したのち、一部はバイアルビン等に分取して気相中の酸素分圧を光学式酸素計(Neo Fox, Ocean Optics)により測定した。
気泡状酸素のフラックス(Fbubble)は次の式によって算出した。
Fbubble = PO2 ×V/(R×T×A×t)
PO2:気体中のO2分圧、V:気体の体積、A:ドーム底の面積、t:培養時間(設置時間)
R:気体定数、T:絶対温度
また、ドーム外側の海水中の溶存酸素を計測し、停留法による底生生物の一次生産速度を見積もった。さらに、大気-海水間の酸素フラックスを計算した。
捕集気体中の酸素分圧は砂礫50.6%、アミジグサ科の褐藻(ウスユキウチワ)43.5%、藍藻(黒色)53.5%、紅藻(無節サンゴモ)50.5%であった。光合成で発生する気泡の酸素分圧は事前に予想した100%ではなかった。これは、気泡状酸素から海水へ一部の酸素が溶解したことと、海水中に初めから溶存している窒素が気泡状酸素へ逃散したことによると考えられる。
底質からのフラックスでは、溶存態+気泡状酸素フラックス(底質からの全フラックス)に対する溶存フラックスの割合は砂礫84.3%、アミジグサ科の褐藻(ウスユキウチワ)79.7%、藍藻(黒色)76.1%、紅藻(無節サンゴモ)88.4%であった。従来の溶存酸素による一次生産速度は観測点周辺で平均13.6 mmol m-2 h-1であり、この値は平均で17.9%過小評価されていることが分かった。
大気-海水間のフラックスでは、薄膜モデル+気泡状酸素フラックス(大気-海水間の全フラックス)に対する薄膜モデルフラックスは砂礫59.2%、アミジグサ科の褐藻(ウスユキウチワ)51.4%、藍藻(黒色)46.3%、紅藻(無節サンゴモ)67.3% であった。従来の薄膜モデルによる大気-海水間の酸素フラックスでは3.68 mmol m-2 h-1の酸素が大気へ逃散する値が得られた。この結果は平均で44.0%過小評価されていることが分かった。