16:15 〜 16:30
[ACG44-04] 民間ジェット機を利用して台風の強度測定を継続して行うための検討
キーワード:台風、航空機観測
台風の中心気圧を推定するため、衛星画像を用いるドボラック法に加えて、マイクロ波放射計や地上レーダーを用いた手法が開発されている。しかし、北西太平洋では1987年に米軍の航空機観測が終了して以降、中心付近の観測値がほとんど得られておらず、推定手法の検証が十分にできない状態にある。台風の航空機観測を行う上で大きな障壁となるのが、強い乱気流に耐える特別仕様のプロペラ機と、訓練を受けた乗組員および研究者を継続して確保することの難しさである。台風は高度1km近くで風速が最も強く、上空に行くほど風が弱いので、低高度および低速の飛行により台風の中心位置と気圧を測定するためには多大な労力と費用を要する。一方、台風の風は上空ほど弱いので、台風の上部を飛行し、航空機搭載の気象レーダーにより着氷のリスクがある強い雨域を避けることができれば、通常の民間航空機でも台風の中心に進入できるのではないかといわれる。T-PARCII (Tropical Cyclone-Pacific Asian Research Campaign for Improvement of Intensity Estimations/Forecasts)では、新たに開発した小型ドロップゾンデと民用ジェット機(Gulfstream-II)を使用し、高度43,000ft(約13.8km)を航行して非常に強い勢力の2017年台風第21号の目に進入し、投下したゾンデにより海上付近における中心気圧を直接観測することに成功した。この観測飛行で特筆されることは、台風の内部で飛行に影響を及ぼす強い乱気流に遭遇しなかったことである。この観測飛行の他に、民用ジェット機で台風の中心またはその近くまで進入した例として、報道取材用の飛行が3事例あることを把握している。そのいずれも台風の内部で経験した揺れは、航空機の機体に影響を及ぼすものではなかったようである。これらの事例をもとに、民間ジェット機を利用して台風の強度測定を継続して行うために必要となる航空機の選定や飛行方法について検討する。また、台風内部の航行が可能となった場合の波及効果(航空交通管制上の利点)についても議論する。