日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW20] 流域の物質輸送と栄養塩循環-人間活動および気候変動の影響-

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 105 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:齋藤 光代(岡山大学大学院環境生命科学研究科)、小野寺 真一(広島大学大学院総合科学研究科)、細野 高啓(熊本大学大学院先導機構、共同)、Adina Paytan(University of California Santa Cruz)、座長:Paytan Adina(University of California, Santa Cruz)

15:30 〜 15:45

[AHW20-06] 秋田県・田沢湖における水質と循環の歴史的変遷

*知北 和久1大八木 英夫2藤井 智康3網田 和宏4 (1.北海道大学北極域研究センター、2.日本大学文理学部、3.奈良教育大学、4.秋田大学大学院理工学研究科附属理工学研究センター)

キーワード:田沢湖、酸性温泉水、地球温暖化、一回循環、部分循環

秋田県・田沢湖では,1940年1月20日から開始された玉川河川水(pH=1-2の玉川温泉水を含む)の取水により,生息していた陸封型のクニマスが死滅した。この発表では,20世紀初頭から続く調査研究をレビューし,田沢湖における水質と循環形態の歴史的変遷を議論する。玉川河川水の導入で,田沢湖のpHは6.7から4.2へと低下した。1991年4月に玉川温泉水に対する中和処理装置の稼働が開始され,田沢湖の現在のpHは5.2 – 5.6とやや回復傾向にある。田沢湖は,20世紀までは年最低の湖面水温が2℃程度で2回循環湖であった。しかし,地球温暖化により気温は0.028 ℃/yearで上昇しており,現在の最低水温は4 ℃程度である。このことから,現在はほぼ1回循環湖の状態となっており,このまま温暖化が進めば,将来は部分循環湖になる可能性がある。この循環形態の変化は,底層に低酸素水塊を形成させ,生態系にとって深刻な影響をもたらすことが考えられる。