日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW20] 流域の物質輸送と栄養塩循環-人間活動および気候変動の影響-

2018年5月21日(月) 10:45 〜 12:15 コンベンションホールB(CH-B) (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:齋藤 光代(岡山大学大学院環境生命科学研究科)、小野寺 真一(広島大学大学院総合科学研究科)、細野 高啓(熊本大学大学院先導機構、共同)、Adina Paytan(University of California Santa Cruz)、座長:小野寺 真一(広島大学大学院総合科学研究科)

11:00 〜 11:15

[AHW20-19] 簡易な流域土地利用モデルによる窒素,リン,SS負荷係数の算出 -北海道,東北地方の解析-

*吉川 省子1清水 裕太2松森 堅治2 (1.農研機構 農環センター、2.農研機構 西日本農研)

キーワード:流域モデル、土地利用、面源負荷係数、栄養塩

【目的】農地からの肥料成分等の水系への負荷強度を求めるために,簡易な流域土地利用モデルにより,土地利用毎の窒素,リン、懸濁物(SS) 負荷の大きさの指標となる河川の係数を,北海道および東北地方を対象に算出した。【方法】(1)国交省の等高線データ(DEM),土地利用データを用いてGIS手法により,北海道の13一級河川流域,東北地方の12一級河川流域とその12サブ流域を作成し,各流域の土地利用(水田,畑,森林,建物用地)率を求めた。(2)流域出口における窒素、リン、およびSS濃度の平均値を環境省の10年間の公表データから求めた。(3)濃度を目的変数,各土地利用率を説明変数とする重回帰分析により,各土地利用率の係数(窒素負荷係数,リン負荷係数と定義)を算出した。【結果】(1)窒素係数は,水田,畑,森林,建物用地で北海道ではそれぞれ -2.4,2.4,0.1,39.8,東北の一級河川流域ではそれぞれ 2.9,9.8**,0.49,-6.8,東北地方の一級河川サブ流域ではそれぞれ1.2,6.7,0.4,4.3であった。リン負荷係数は北海道の一級河川流域ではそれぞれ 0.08,0.07,0.02,1.4,東北の一級河川流域ではそれぞれ 0.20**,0.23**,0.00,0.01,東北地方の一級河川サブ流域では0.15,0.10,0.00,0.80*であった(*は5%,**は1%水準で有意)。水田および畑の係数は東北地方では北海道に比べて高かった。北海道の流域では窒素、リンともに建物用地の負荷係数が最も高かったのに対して、東北地方の流域では窒素、リンともに畑で高かった。負荷係数の流域サイズ依存性は見られなかった。東北地方の県別の余剰施肥窒素濃度は、河川窒素濃度と相関する傾向が見られたが、リンでは見られなかった。得られたSS負荷係数は北海道の一級河川流域では決定係数が0.5以下で信頼性が特に低く,東北の一級河川流域ではそれぞれ 21.7,47.9,4.3,-0.94(暫定値),東北地方の一級河川サブ流域では25.4.-17.3,2.6,122.0(暫定値)であった。SS負荷係数は信頼性は高くない理由は、SSが個々の降雨イベントに鋭敏に反応して平均値を取りにくいためと考えられた。