16:15 〜 16:30
[AHW22-04] モデル降水バイアス低減手法の開発
キーワード:機械学習、バイアス低減、ダウンスケーリング
モデル降水と観測降水で(平野で過小評価、山岳で過大評価)顕著なバイアスが見られる。(図1a, b)このようなバイアスは、降水予報に大きく影響するため、中小規模河川での流量予測や土砂災害危険地域の予測、洪水氾濫地域の予測の精度向上を妨げる一つの要因となっている。災害による被害を少なくするためにも、バイアスの低減は不可欠である。バイアスの原因の1つとしてモデルの地形解像度が挙げられる。高解像度にすれば地形表現が良くなり、大幅な改善が期待される。一方、高解像度化に伴い再現される気象現象も異なってくるため、雲微物理過程、積雲対流パラメタリゼーションなどの物理過程の調整が必要になる。しかし、比較検証を行うための観測データも十分ではなく、調整は容易ではない。また、Z*座標系では急斜面での気圧傾度計算に誤差が生じやすい。単に解像度を高くすれば良い訳ではない。
基本的に降水は局所的なケースを除けば、低気圧の前線付近や季節風に伴う地形性要因など、高頻度で比較的広範囲に影響を与える要因によって形成される。大規模気象場による水蒸気輸送と対流不安定に大きな違いはなく、モデルと実際の地形の違いに対応して降水が形成されると想定される。そのため、降水分布にバイアスがあるものの、降水の起こるタイミングや強弱は、モデルと観測で大きな違いはないと考えられる。
そこで、本研究では、ある地点の観測降水がその周辺地域のモデル降水分布パターンに対応すると仮定し、機械学習を用いて仮説を検証を実施した。もし、この仮説が正しければ、モデル降水分布パターンから地点毎の降水量の時間変化が予測できるだろう。さらに、予測値によりモデル降水のバイアスが大きく改善することが期待される。
機械学習にはSVM(SVR)を採用した。Region1 (図1a)でのモデル降水量(30x20格子)を特徴ベクトルとして各格子での観測降水量を学習し、学習期間以外でモデル降水量データを用いて各格子での降水量を予測する。学習期間は冬季(12月~2月)の2014年~2017年(2015年1月を除く)で、テスト期間は2015年1月とした。
図1cはPoint Aでの降水量の3時間ごとの時間変化を示す。機械学習により予測した降水量の時間変化特性が観測とよく一致した。月平均降水量については、観測値が0.77mm/hrであるのに対し、SVMによる予測値は0.80mm/hr(モデル降水量は0.35mm/hr)であり、量的にも良いパフォーマンスを示した。図1d,e,fは、それぞれ観測、SVM予測値、モデルの月平均降水量分布を示す。SVM予測値ではモデル降水バイアスが大きく低減されており、ほぼ観測と同じ分布特徴を示していた。
SVMにより降水特性が再現できるのは、地形性降水の分布に何らかのパターン(規則性)があるためと想定される。恐らく、季節風の風向風速に対して局所的な地形性降水の分布パターンが変化すると推測される。詳細なメカニズムは不明だが、季節風のパターンと地形性降水分布パターンに何らかの関係性があると思われる。モデル降水では、現実と地形その他が大きく異なるため降水分布パターンが観測と大きく異なるが、観測降水と何らかの対応関係があると考えられる。その関係性を利用して、モデル降水分布パターンから観測降水の特性を予測したのが本手法である。この手法の適用限界を知る上でも、上記の関係性を明確にすることは不可欠である。発表では、関係性の詳細と本手法の適用限界について示す予定である。今後は統計ダウンスケーリングの新しい手法として機械学習を用いたダウンスケーリング手法を提案し、局地気象予報への実用に向けて取り組む予定である。
基本的に降水は局所的なケースを除けば、低気圧の前線付近や季節風に伴う地形性要因など、高頻度で比較的広範囲に影響を与える要因によって形成される。大規模気象場による水蒸気輸送と対流不安定に大きな違いはなく、モデルと実際の地形の違いに対応して降水が形成されると想定される。そのため、降水分布にバイアスがあるものの、降水の起こるタイミングや強弱は、モデルと観測で大きな違いはないと考えられる。
そこで、本研究では、ある地点の観測降水がその周辺地域のモデル降水分布パターンに対応すると仮定し、機械学習を用いて仮説を検証を実施した。もし、この仮説が正しければ、モデル降水分布パターンから地点毎の降水量の時間変化が予測できるだろう。さらに、予測値によりモデル降水のバイアスが大きく改善することが期待される。
機械学習にはSVM(SVR)を採用した。Region1 (図1a)でのモデル降水量(30x20格子)を特徴ベクトルとして各格子での観測降水量を学習し、学習期間以外でモデル降水量データを用いて各格子での降水量を予測する。学習期間は冬季(12月~2月)の2014年~2017年(2015年1月を除く)で、テスト期間は2015年1月とした。
図1cはPoint Aでの降水量の3時間ごとの時間変化を示す。機械学習により予測した降水量の時間変化特性が観測とよく一致した。月平均降水量については、観測値が0.77mm/hrであるのに対し、SVMによる予測値は0.80mm/hr(モデル降水量は0.35mm/hr)であり、量的にも良いパフォーマンスを示した。図1d,e,fは、それぞれ観測、SVM予測値、モデルの月平均降水量分布を示す。SVM予測値ではモデル降水バイアスが大きく低減されており、ほぼ観測と同じ分布特徴を示していた。
SVMにより降水特性が再現できるのは、地形性降水の分布に何らかのパターン(規則性)があるためと想定される。恐らく、季節風の風向風速に対して局所的な地形性降水の分布パターンが変化すると推測される。詳細なメカニズムは不明だが、季節風のパターンと地形性降水分布パターンに何らかの関係性があると思われる。モデル降水では、現実と地形その他が大きく異なるため降水分布パターンが観測と大きく異なるが、観測降水と何らかの対応関係があると考えられる。その関係性を利用して、モデル降水分布パターンから観測降水の特性を予測したのが本手法である。この手法の適用限界を知る上でも、上記の関係性を明確にすることは不可欠である。発表では、関係性の詳細と本手法の適用限界について示す予定である。今後は統計ダウンスケーリングの新しい手法として機械学習を用いたダウンスケーリング手法を提案し、局地気象予報への実用に向けて取り組む予定である。