日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW25] 同位体水文学 2018

2018年5月23日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:安原 正也(立正大学地球環境科学部)

[AHW25-P01] 神流川扇状地における地下水の水質とその形成プロセス

松本 翔1、*安原 正也2李 盛源2鈴木 裕一2 (1.(株)千代田製作所、2.立正大学地球環境科学部)

キーワード:神流川扇状地、河川水と地下水の交流、地下水水質、地下水の硬度、施肥

埼玉県と群馬県の県境に沿って流下する神流川によって形成された神流川扇状地を対象に,同扇状地の地下水の水質の空間分布と水質形成プロセスの解明を目的とした地球化学的研究を行った.扇状地右岸の扇央部から扇端部に位置する埼玉県上里町とその周辺地域において,深度7mから深度170mの井戸計40本から地下水試料を採取して水質分析を行ったところ,1)硝酸イオン濃度と硫酸イオン濃度の空間分布から,活発な農業活動に伴う施肥(化学肥料)の影響が深度100mを超える深さの地下水まで及んでいること,2)扇状地の透水性のよさを反映して,一部の地域・深度の地下水を除いて脱窒等の還元反応は生起していないこと,3)地下水の硬度(アメリカ硬度)は約90mg/Lから280mg/Lと著しく高いこと,4)硬度は深度方向に増加する傾向が認められること,5)硬度を構成するカルシウムイオン濃度は深度方向の変化は小さいが,一方マグネシウムイオンについては深度方向に濃度の明瞭な増加が認められること,などの水質的な特徴が明らかとなった.
続いて,a)神流川の河川水(河川伏没水)とb)深度7mの浅井戸の地下水(降雨浸透水)をエンドメンバーとした酸素水素同位体に基づく混合解析を行い,地下水の形成に果たす神流川からの河川伏没水の寄与率を算出した.その結果,埼玉県上里町とその周辺地域においては,河川伏没水の寄与率が50%を超える地帯が神流川右岸から北東方向に“舌状”に伸びていることが明らかとなった.また,河川伏没水の寄与率と塩化物イオン濃度には正の関係が認められたことから,扇状地の地下水は,塩化物イオン濃度の高い神流川からの河川伏没水と同イオン濃度の低い降雨浸透水の混合によって形成されていることが明らかとなった.