日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW26] 都市域の水環境と地質

2018年5月23日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:林 武司(秋田大学教育文化学部)、西田 継(山梨大学大学院総合研究部国際流域環境研究センター)、鈴木 弘明(日本工営株式会社 中央研究所、共同)、浅田 素之(清水建設株式会社 技術研究所)

[AHW26-P04] 東京湾奥部における沖積層低透水部の間隙水の塩分濃度

*林 武司1宮越 昭暢2宮地 良典2小松原 純子2安原 正也3 (1.秋田大学教育文化学部、2.国立研究開発法人産業技術総合研究所、3.立正大学地球環境科学部)

キーワード:東京湾、沖積層、間隙水、塩濃度

堆積層中の間隙水の地球化学性状は,地層の堆積環境を反映する一方で,堆積後の環境変化,すなわち続成作用や,地下水流動による移流・分散,水・地層間の地球化学反応,溶存物質の拡散現象などによって変化する.このような間隙水の地球化学性状の変化は,沖積層内においても生じていることが国内外において広く認められているが,そのメカニズムやプロセスについては,まだ不明な点が多い.その一方で,日本をはじめ世界各地の多くの沿岸都市域では,沿岸域の埋立て・造成や地下水開発により,沖積層中の間隙水や溶存物質の挙動は自然状態と異なっている.また他方,間隙水の地球化学性状の変化は,沖積層の土木・工学的特性に大きく影響することが指摘されている.すなわち,何らかのプロセスによってシルト・粘土質層中の塩分が溶脱される(リーチング)と,それらの地層の鋭敏性・脆弱性に影響する.これらの点から,沖積層上に立地する沿岸都市域では,水資源管理のための水循環・水質形成プロセスの理解としてだけでなく,地盤の強度・脆弱性の評価のためにも,沖積層中の地球化学組成の把握が課題の1つとなっている.産業技術総合研究所は東京湾奥部の沖積低地(東京低地~千葉市)において,沖積層の層序や堆積構造等を明らかにするためのボーリング調査を実施してきた.その過程において,沖積層中の間隙水の地球化学性状についても調査が行われてきたが(内山ほか,2011など),水質形成機構の解明には至っていない.本研究では,これら一連のボーリング調査によって得られたコア試料を用いて,沖積層堆積後における間隙水の挙動や水質形成プロセスを明らかにすることを目的として,コア試料から間隙水を抽出して地球化学性状を把握するなどの調査を行ってきた.本発表では,東京低地と千葉県内(千葉県船橋市~千葉市)を対比しながら,塩分濃度の分布やその成因について検討した結果を報告する.

船橋市~千葉市内の9地点(いずれも埋立地)にて得られたボーリングコア試料のうち,沖積層中のシルト質層の間隙水の電気伝導率は65mS/m~2,000mS/m以上であった.なお,2,000mS/m以上とは,測定に用いた機器の測定限界を超えたことを意味する.これらの値を,東京低地で掘削された2地点(どちらも非埋立地)のコア懸濁水の電気伝導率(67~1,000mS/m;内山ほか,2011)と比較すると,船橋市~千葉市の埋立地下では,より海水の影響が強く残されているものの,淡水化が進行していることが確認された.また,各ボーリング地点における電気伝導率の鉛直分布から,沖積層内では上位ほど電気伝導率が高いことが示唆された.