[AOS14-P02] 静止海色衛星に基づく高解像度海面塩分データセットを用いた気象研瀬戸内海モデル海面塩分場の検証
気象研究所では精緻な沿岸防災情報・海況情報の提供を目的として、水平解像度2kmの日本近海モデルを開発中である。このような高解像度沿岸海洋モデリングにおいて河川からの淡水供給は重要な要素の1つである。我々は本モデルの河川境界条件として水文モデルの出力(流域雨量指数)の利用を検討している。本指数は気象庁による洪水警報・注意報発表の判断基準の1つとして利用されているものである。本データは流量がほぼ観測されていないか少なくとも公表されていない中小河川の寄与も含む。本講演では2011年台風第15号によって引き起こされた強降水イベント後の海面塩分場に着目する。我々のモデルでは日本1級河川の河口付近に極度に低塩分な表層水が再現されている。比較的に低塩分な表層水が四国東岸に沿って南に流れ、バルーン状の構造を作るとともに高塩分な太平洋水との間に強い塩分フロントを作成している。また、三原川、日高川、会津川といった中小河川の河口域付近にも低塩分のシグナルが見られた。このような高解像度沿岸海洋モデルで再現された海面塩分分布の検証は、観測データ不足のためこれまで困難であった。一方、近年、神戸大学では静止海色衛星に基づく高解像度海面塩分データセットが開発されている。本データセットは現状瀬戸内海をカバーしており、ゆくゆくは日本全域を対象とする予定である。本データセットにおいても我々のシミュレーション結果と同様の海面塩分場の特徴が見られることがわかった。これらの結果は日本沿岸海洋シミュレーションとその検証における、水文モデル出力と本海面塩分データセットの有用性を示しており、また1級河川以外の中小河川の寄与も考慮することの重要性を示している。