09:45 〜 10:00
[AOS15-04] 2017年黒潮大蛇行の発生
キーワード:黒潮大蛇行、傾圧不安定、渦、引き金蛇行
1. はじめに
2017年8月下旬から9月にかけて、前回2004-2005以来12年ぶりとなる黒潮大蛇行が始まった。海洋研究開発機構アプリケーションラボ(JAMSTEC/APL)の海洋予測モデルJCOPE2Mを使い、2017年の黒潮大蛇行の発生までの様子を解析した。
2. 使用データ
JAMSTEC/APLが行っている「日本沿海予測可能性実験Japan Coastal Ocean Predictability Experiment (JCOPE)」では、衛星データおよび現場観測データを海洋循環モデルPrinceton Ocean Model(POM)に同化したJCOPE2Mによる解析値を週2回更新しており、解析値を初期値として2ヶ月先までの予測を行っている(http://www.jamstec.go.jp/aplinfo/kowatch/)。JCOPE2Mの領域は北西太平洋(108-180ºE,10.5-62ºN)で、水平1/12°格子の分解能である。静止気象衛星「ひまわり8号」の高頻度・高解像度の海面水温データを同化するために、Multi-scale 3D-VARという手法を採用している(Miyazawa et al. 2017)。
3. 引き金小蛇行発生
2017年3月頃までに、九州南東に黒潮小蛇行が発生した。この小蛇行は、今回の大蛇行の前兆となる引き金蛇行である。小蛇行が発達する時に、西進する低気圧性渦との融合による小蛇行の発達と、小蛇行を強める関係にあるペアとなる高気圧性渦が黒潮上流からの渦によって発達する様子が見られた。同様の小蛇行の発達は2004年の引き金蛇行の発達時にも見られている(Miyazawa et. al. 2008, Tsujino et al. 2013) 。
4. 小蛇行から大蛇行へ
小蛇行は、2つに分かれて黒潮の下流に進行した。便宜上、小蛇行1と小蛇行2と分けて呼ぶ。小蛇行1は下流に移動しながら発達し、7月上旬には大きな蛇行になった。しかし、この蛇行はそのまま東に進み、安定した大蛇行として継続することはなかった。
一方、小蛇行2が7月頃から下流に移動を始めて8月中旬には、紀伊半島潮岬に達した。小蛇行1が潮岬を通過した時に比べ、小蛇行2が通過した時の方が大きな離岸であった。Endoh and Hibiya (2001, 2009)は数値モデルによる結果から、膠州(こうしゅう)海山と呼ばれる潮岬のほぼ真南約200 kmに位置する海底地形まで届くほど小蛇行の離岸が大きいと膠州海山の周りの深層で高気圧性の渦を惹起し、小蛇行と傾圧不安定を起こしやすくし、大蛇行にいたる蛇行の発達をうながすことを示唆した。小蛇行1と小蛇行2が潮岬通過したときの深さ3000mの流速を比較すると、小蛇行1が潮岬を通過した時とは違い、小蛇行2の通過時は膠州海山の周りに高気圧性渦が形成された。深層の高気圧性渦と表層の小蛇行は傾圧不安定を起こしやすい位置関係にあり、潮岬沖での小蛇行2の急激な発達につながったと考えられる。小蛇行2から8月下旬までには大きな蛇行に発達し(黒潮大蛇行)、2018年2月現在も継続している。
2017年8月下旬から9月にかけて、前回2004-2005以来12年ぶりとなる黒潮大蛇行が始まった。海洋研究開発機構アプリケーションラボ(JAMSTEC/APL)の海洋予測モデルJCOPE2Mを使い、2017年の黒潮大蛇行の発生までの様子を解析した。
2. 使用データ
JAMSTEC/APLが行っている「日本沿海予測可能性実験Japan Coastal Ocean Predictability Experiment (JCOPE)」では、衛星データおよび現場観測データを海洋循環モデルPrinceton Ocean Model(POM)に同化したJCOPE2Mによる解析値を週2回更新しており、解析値を初期値として2ヶ月先までの予測を行っている(http://www.jamstec.go.jp/aplinfo/kowatch/)。JCOPE2Mの領域は北西太平洋(108-180ºE,10.5-62ºN)で、水平1/12°格子の分解能である。静止気象衛星「ひまわり8号」の高頻度・高解像度の海面水温データを同化するために、Multi-scale 3D-VARという手法を採用している(Miyazawa et al. 2017)。
3. 引き金小蛇行発生
2017年3月頃までに、九州南東に黒潮小蛇行が発生した。この小蛇行は、今回の大蛇行の前兆となる引き金蛇行である。小蛇行が発達する時に、西進する低気圧性渦との融合による小蛇行の発達と、小蛇行を強める関係にあるペアとなる高気圧性渦が黒潮上流からの渦によって発達する様子が見られた。同様の小蛇行の発達は2004年の引き金蛇行の発達時にも見られている(Miyazawa et. al. 2008, Tsujino et al. 2013) 。
4. 小蛇行から大蛇行へ
小蛇行は、2つに分かれて黒潮の下流に進行した。便宜上、小蛇行1と小蛇行2と分けて呼ぶ。小蛇行1は下流に移動しながら発達し、7月上旬には大きな蛇行になった。しかし、この蛇行はそのまま東に進み、安定した大蛇行として継続することはなかった。
一方、小蛇行2が7月頃から下流に移動を始めて8月中旬には、紀伊半島潮岬に達した。小蛇行1が潮岬を通過した時に比べ、小蛇行2が通過した時の方が大きな離岸であった。Endoh and Hibiya (2001, 2009)は数値モデルによる結果から、膠州(こうしゅう)海山と呼ばれる潮岬のほぼ真南約200 kmに位置する海底地形まで届くほど小蛇行の離岸が大きいと膠州海山の周りの深層で高気圧性の渦を惹起し、小蛇行と傾圧不安定を起こしやすくし、大蛇行にいたる蛇行の発達をうながすことを示唆した。小蛇行1と小蛇行2が潮岬通過したときの深さ3000mの流速を比較すると、小蛇行1が潮岬を通過した時とは違い、小蛇行2の通過時は膠州海山の周りに高気圧性渦が形成された。深層の高気圧性渦と表層の小蛇行は傾圧不安定を起こしやすい位置関係にあり、潮岬沖での小蛇行2の急激な発達につながったと考えられる。小蛇行2から8月下旬までには大きな蛇行に発達し(黒潮大蛇行)、2018年2月現在も継続している。