[AOS18-P01] RINKO型溶存酸素センサ搭載型Deep NINJAによる溶存酸素観測
★招待講演
キーワード:溶存酸素計測、RINKO型センサ
海洋研究開発機構は2016年度より鶴見精機およびJFEアドバンテックと共同で、RINKO型溶存酸素(DO)センサを搭載した深海用フロートDeep NINJAの開発を進めてきた。搭載する溶存酸素センサ(AROD-FT)は、JFEアドバンテックが深海フロート向けに新たに開発したもので、従来のアルゴフロート用DOセンサ(ARO-FT:最大観測深度2000dbar)を改良し、最大7000dbarまでの観測が可能となっている。2台の試作機が2017年6月に完成し、そのうちの1台を2017年7月下旬にJAMSTECの地球海洋研究船「みらい」のMR17-04航海にて、北西太平洋亜寒帯域のK2観測点(47°N, 160°E)に投入し、運用試験を兼ねた観測を行った。本研究では、このフロートで観測されたDOデータの品質を評価し、その補正方法等について考察する。なおフロートデータの検証には、投入直前に実施したCTD-DO観測で得られたデータを用いる。
Deep NINJAによる1回目のDO観測プロファイルは、検証データと比べて深層および海面付近で高めの値を示している。この偏差は、(DO躍層を除いて)検証データのDO値にほぼ比例し、その比例係数(補正係数)は0.051と求められた。
このフロートは投入地点の近傍で全9回の観測を行った。投入直前に得られたCTD-DOデータがこれらの検証に有効であると仮定し、1回目と同様に補正係数を求めたところ、その値は観測回数の進行と共に低下した。5回目以降、補正係数は約0.02で推移するが、僅かながら減少傾向を示しており、センサ出力が安定したと結論するには更なる研究が必要である。
DO躍層で生じた負偏差は、RINKOセンサの応答の「遅さ」に原因を持つ。浮上しつつ観測するDeep NINJAでは、搭載されたRINKOセンサは(DO鉛直勾配)×(浮上速度)で変化するDOを観測する。DO躍層においては、観測すべきDOの時間変化は最大で約28 micro-mol kg-1 分-1に達し、(応答速度の速いRINKOであっても)応答できずに下層の低DOの値を引きずり、低めの値を示したと考えられる。上記の補正係数を用いて補正されたDOデータにおいて、DO躍層付近でのDO偏差とDO鉛直勾配はおおよそ線形関係(R2~0.65)にあり、DO鉛直勾配を考慮することでさらなる補正が可能となる。なおこの線形関係からRINKOセンサの応答の時定数、約20~28秒が得られる。
なお残りの1台はオーストラリアの研究船により南極沿岸域に2018年1月下旬に投入されており、検証用データを入手でき次第、同様の解析を行う予定である。
Deep NINJAによる1回目のDO観測プロファイルは、検証データと比べて深層および海面付近で高めの値を示している。この偏差は、(DO躍層を除いて)検証データのDO値にほぼ比例し、その比例係数(補正係数)は0.051と求められた。
このフロートは投入地点の近傍で全9回の観測を行った。投入直前に得られたCTD-DOデータがこれらの検証に有効であると仮定し、1回目と同様に補正係数を求めたところ、その値は観測回数の進行と共に低下した。5回目以降、補正係数は約0.02で推移するが、僅かながら減少傾向を示しており、センサ出力が安定したと結論するには更なる研究が必要である。
DO躍層で生じた負偏差は、RINKOセンサの応答の「遅さ」に原因を持つ。浮上しつつ観測するDeep NINJAでは、搭載されたRINKOセンサは(DO鉛直勾配)×(浮上速度)で変化するDOを観測する。DO躍層においては、観測すべきDOの時間変化は最大で約28 micro-mol kg-1 分-1に達し、(応答速度の速いRINKOであっても)応答できずに下層の低DOの値を引きずり、低めの値を示したと考えられる。上記の補正係数を用いて補正されたDOデータにおいて、DO躍層付近でのDO偏差とDO鉛直勾配はおおよそ線形関係(R2~0.65)にあり、DO鉛直勾配を考慮することでさらなる補正が可能となる。なおこの線形関係からRINKOセンサの応答の時定数、約20~28秒が得られる。
なお残りの1台はオーストラリアの研究船により南極沿岸域に2018年1月下旬に投入されており、検証用データを入手でき次第、同様の解析を行う予定である。