日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS19] 海洋化学・海洋生物学

2018年5月22日(火) 10:45 〜 12:15 105 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:小埜 恒夫(国立研究開発法人 水産研究・教育機構)、山田 奈海葉(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、齊藤 宏明(東京大学大気海洋研究所、共同)、伊藤 進一(東京大学大気海洋研究所)、座長:小埜 恒夫(水産研究・教育機構)

11:30 〜 11:45

[AOS19-04] 海洋酸性化が亜寒帯沿岸域に及ぼす影響の評価・予測

*山家 拓人1高尾 信太郎2藤井 賢彦1 (1.北海道大学大学院環境科学院、2.国立極地研究所)

キーワード:海洋酸性化、沿岸生態系、亜寒帯、日周変動

人間活動にともなう人為起源CO2の排出によって、地球温暖化だけでなく海洋酸性化も進行している。海洋酸性化が進むと海洋中で炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムが生成されにくくなり、これらの骨格や殻を持つサンゴや貝などの生物に悪影響が出ることが懸念される。とくに沿岸付近は藻場が存在していることが多く、また陸起源の影響も直接受けやすいため、日周変動、季節変動、経年変動のそれぞれが外洋よりも顕著に表れる。しかし、亜寒帯沿岸域では冬期の荒天により観測データの取得が難しいこともあり、研究例は少ない。そこで、本研究では北海道小樽市忍路湾で物理・化学項目の長期連続モニタリングを行い、亜寒帯沿岸域における海洋酸性化項目の時間変動を調べた。
結果としてpHと溶存酸素(DO)の増減のタイミングがほぼ一致し、季節ごとの変動を見ると春・夏季のほうが秋・冬季よりもpHの日周変動が大きかった。pHの日周変動は、5~8月には平均0.1以上の変化が起き、特に変化の大きかった8月の日周変動幅の平均は0.15、最大は0.26であり1日0.2以上の変化が多く観測された。9~11月の日周変動幅の平均は0.1を下回り、11月では平均日周変動幅は0.03、最大でも0.07であった。このように、季節による日周変動の差が明らかであったことから、藻場を含めた一次生産者による昼間の光合成と夜間の呼吸の顕著な影響が示唆され、生物量や日射量の多い夏季に特に大きく、反対に冬季には変動が小さくなっていくことが分かった。