12:00 〜 12:15
[AOS19-06] 津軽暖流の表層における海洋酸性化の進行
キーワード:海洋酸性化、沿岸域、炭素循環
生物生産力が高い沿岸域や海浜域での海洋酸性化の進行と生物への影響評価は、「持続可能な海洋利用」に直結するため社会的要請は大きいが、日本沿岸域の海洋酸性化モニタリング点は少ない。海洋研究開発機構むつ研究所では、津軽海峡に面する所内の関根浜港の東防波堤の突堤(水深9m)と港内(水深3m)の2カ所で2014年2月から週1回のCTDとバケツによる表面採水観測を行い、津軽暖流域の環境変動および海洋酸性化の進行とその要因を調べている。この活動は、国際酸性化観測ネットワークGlobal Ocean Acidification Observing Network(http://data.nanoos.org/files/goaon/inventory/assets-/FOTS_588.html)に登録済みである。また、西部津軽海峡の恵山岬-尻屋崎間にSE測線、大間-函館間にHO測線、下北半島北部沖にOSシリーズ測点を設け、2012年夏から北海道大学附属練習船「うしお丸」により表面から海底までCTD-CMS採水観測を年4~5回行っている。そのうちSE9・SE3・HO3・OS1の計4点を大測点と設定し、溶存無機炭素(DIC)、アルカリ度(TA)、水温、塩分、栄養塩、全溶存有機炭素(TOC)、全溶存窒素、海水の酸素同位体、クロロフィルaなどのデータを取得している。DIC、TA等よりpHとアラゴナイト飽和度Ωaraginiteを算出し、蒸発・降水の影響を除くために塩分35への規格化を行った上でその他の取得データと共に解析した。
関根浜港の2点(突堤と港内)と津軽海峡での船舶観測大測点4点を比較したところ、恵山岬沖のSE9では、冬から夏にかけて沿岸親潮の影響を受けていた。その他の大測点(HO3, OS1, SE3)の表層と関根浜港突堤の変動はよく一致しており、港突堤の観測値は津軽暖流の特徴を示していた。他方、港内データは、突堤よりもバラツキが大きく、潮汐などを含む短周期変動が影響していると思われた。
津軽暖流表層水の各成分の経年変化を求めるため、Takahashi et al. 2006の手法に従って船舶観測点(HO3, OS1, SE3)の表層と突堤の観測値から月平均値を差し引き、各年の年平均値を求めた。このとき、2014年2~4月に約30年ぶりに下北半島まで沿岸親潮が接岸して明らかに例年と異なる水塊が占めていた(佐々木ら2015春季海洋学会)ため、その間の観測値は棄却した。
津軽暖流水表層の年平均値pHおよびΩaraginiteは、ここ数年で有意な低下を示し(pH: −0.0034 ± 0.0009 /yr, p<0.001; Ωaraginite: −0.048 ± 0.006 /yr, p<0.001)、酸性化傾向が示された。加えて、硝酸塩濃度が年々減少しており、生物生産力が変化している可能性もある。この酸性化は、太平洋外洋域や熊野灘沖のそれ(pH: −0.002 /yr, Ωaraginite: −0.01 /yr; MIdorikawa et al., 2010, Dore et al., 2009, Wakita et al., 2017, Ishii et al., 2011)よりもやや速く進行していた。これは、人為起源二酸化炭素の吸収に加え、生物生産変化や陸域・海浜域・海底などから流入した有機物の分解によるDIC増加の影響が加算されている可能性がある。このような海浜域特有の短周期現象(日周変動等)を捉えるため、今冬に関根浜港内でpH・CTDセンサー係留による連続観測を開始した。
関根浜港の2点(突堤と港内)と津軽海峡での船舶観測大測点4点を比較したところ、恵山岬沖のSE9では、冬から夏にかけて沿岸親潮の影響を受けていた。その他の大測点(HO3, OS1, SE3)の表層と関根浜港突堤の変動はよく一致しており、港突堤の観測値は津軽暖流の特徴を示していた。他方、港内データは、突堤よりもバラツキが大きく、潮汐などを含む短周期変動が影響していると思われた。
津軽暖流表層水の各成分の経年変化を求めるため、Takahashi et al. 2006の手法に従って船舶観測点(HO3, OS1, SE3)の表層と突堤の観測値から月平均値を差し引き、各年の年平均値を求めた。このとき、2014年2~4月に約30年ぶりに下北半島まで沿岸親潮が接岸して明らかに例年と異なる水塊が占めていた(佐々木ら2015春季海洋学会)ため、その間の観測値は棄却した。
津軽暖流水表層の年平均値pHおよびΩaraginiteは、ここ数年で有意な低下を示し(pH: −0.0034 ± 0.0009 /yr, p<0.001; Ωaraginite: −0.048 ± 0.006 /yr, p<0.001)、酸性化傾向が示された。加えて、硝酸塩濃度が年々減少しており、生物生産力が変化している可能性もある。この酸性化は、太平洋外洋域や熊野灘沖のそれ(pH: −0.002 /yr, Ωaraginite: −0.01 /yr; MIdorikawa et al., 2010, Dore et al., 2009, Wakita et al., 2017, Ishii et al., 2011)よりもやや速く進行していた。これは、人為起源二酸化炭素の吸収に加え、生物生産変化や陸域・海浜域・海底などから流入した有機物の分解によるDIC増加の影響が加算されている可能性がある。このような海浜域特有の短周期現象(日周変動等)を捉えるため、今冬に関根浜港内でpH・CTDセンサー係留による連続観測を開始した。