日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-TT 計測技術・研究手法

[A-TT32] GNSS-Rが拓く新しい地球観測

2018年5月21日(月) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:市川 香(九州大学応用力学研究所)、日置 幸介(北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

[ATT32-P01] オープンソースソフトウェア受信機によるGNSS-R観測

★招待講演

*海老沼 拓史1 (1.中部大学)

キーワード:リモートセンシング、GNSS、ソフトウェア無線

GNSS-Rとは測位衛星システム(GNSS: Global Navigation Satellite System)を信号源としたバイスタティックレーダであり,衛星から直接届く信号と海面や地表で反射した信号を同時に観測することにより,その位相差や信号強度から海面高度や波浪,バイオマス,土壌水分などを推定することを目的としている.

GNSS反射波の受信には,特殊な信号処理を必要とすることから,従来のGNSS-R観測には,市販のGNSS受信機ではなく,カスタム品が必要とされてきた.しかし,近年の移動体通信サービスの急速な普及により,数百MHzから数GHzの信号にチューニング可能な広帯域トランシーバICが安価に入手可能となった.これらICで取得されたベースバンド信号は,従来の無線ハードウェアではなく,汎用コンピュータ上のソフトウェアによって信号処理が行われる.このようなアーキテクチャをソフトウェア無線(SDR: Software-Defined Radio)と呼ぶ.

これら広帯域トランシーバICと,ベースバンド信号をPCに転送するための高速シリアルインターフェイスを搭載したSDRプラットフォームは,オープンソースハードウェアとして広く公開されている.これらプラットフォームの中には,MIMO通信に対応したものもあり,複数アンテナ間で高い位相同期が実現されている.この機能は,直接波と反射波の位相差を観測するGNSS-Rの実装に適しているといえる.

一方で,GNSS-Rのデジタル信号処理については,各研究グループが独自に開発をしており,オープンソースとして公開されているソフトウェアは存在しない.GNSS-R観測は,通常のGNSS受信機による位置情報だけではなく,相関処理や信号追尾といった受信機内部の信号処理情報にもアクセスが必要となる.これら情報にGNSS-Rのユーザが自由にアクセスできるよう,オープンなGNSS-R信号処理ソフトウェアの開発が望まれる.

本研究では,これまでのカスタム受信機によるGNSS-R観測について要約するとともに,最新のSDRプラットフォームによるGNSS-R観測システムの構築と,GNU-RadioなどのオープンソースソフトウェアによるGNSS-R信号処理の実装について検討する.