日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-AO 宇宙生物学・生命起源

[B-AO01] アストロバイオロジー

2018年5月22日(火) 09:00 〜 10:30 101 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:薮田 ひかる(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、杉田 精司(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、深川 美里(名古屋大学、共同)、藤島 皓介(東京工業大学地球生命研究所)、座長:杉田 精司(東京大学大学院 理学系研究科)、深川 美里(名古屋大学大学院 理学研究科)

09:30 〜 09:55

[BAO01-02] 光合成生物の可視光および近赤外光吸収色素の合成系

★招待講演

*塚谷 祐介1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:近赤外光、光合成色素、赤色矮星

ハビタブル惑星の探査対象として近年相次いで発見されている赤色矮星が注目されており、その周辺惑星におけるバイオマーカー(生命の存在を示す兆候/痕跡)の観測が期待されている。バイオマーカーの1つとして、光合成生物が光波長を吸収することによって起こる「レッドエッジ」と呼ばれる反射スペクトルが挙げられる。赤色矮星まわりの惑星地表面では可視光よりも近赤外光が優先するため、レッドエッジも長波長側の近赤外線に移動すると考えられてきた。しかしながら、最近の研究成果により近赤外線は水で吸収されるため水中で発生・進化して最初に上陸する光合成生物は地球と同じように光合成に可視光を利用すること、その結果従来の予想とは異なり、赤色矮星周辺であっても地球の植生と同じ位置にレッドエッジが現れる可能性が高いことが提唱された。この仮説をさらに発展させると、水中深くで可視光を利用していた初期の光合成生物は、その後、水表面や陸上に進出する過程で、地表ではなお優先している近赤外光を利用した光合成へ適応する必要がある。光合成の光波長利用の進化の道筋は、従来考えられていた近赤外光→可視光ではなく、可視光→近赤外光であると言える。我々はこれまでに、CORという色素合成蛋白質が生物種によって異なる反応性を示し、それぞれの種内で可視光あるいは近赤外光吸収型の色素をもたらすことを示した。つまり、可視光利用から近赤外光利用の進化は、CORという1つのタンパク質の進化でモデル化できることが期待される。本発表では、これまで明らかにされたCORの様々な反応特性について紹介する予定である。可視光利用型から近赤外光利用型光合成への進化過程が分かれば、系外惑星のレッドエッジ観測に際して波長範囲(可視光から近赤外光までの広範囲をカバーするか否か)の決定に資することが出来るだろう。