日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-AO 宇宙生物学・生命起源

[B-AO01] アストロバイオロジー

2018年5月22日(火) 10:45 〜 12:15 101 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:薮田 ひかる(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、杉田 精司(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、深川 美里(名古屋大学、共同)、藤島 皓介(東京工業大学地球生命研究所)、座長:藤島 皓介(ELSI 地球生命研究所)、薮田 ひかる(広島大学大学院 理学研究科)

11:25 〜 11:40

[BAO01-07] 生命誕生場に必要な9つの条件と複雑系科学に取り組むための反証可能性

*丸山 茂徳1 (1.東京工業大学地球生命研究所)

キーワード:生命誕生場、自然原子炉間欠泉、検証可能性

地球上で生命が誕生するためには、満足しなければならない条件が少なくとも9つある。その9つとは、(1)エネルギー源(電離放射線と熱エネルギー)、(2)栄養塩の供給(リン、カリウム、レアアース元素など)、(3)生命構成主要元素の供給、(4)CH4, HCN, NH3などの還元ガスの濃集、(5)膜やRNAを合成するための乾湿サイクル、(6)非毒性の湖水環境、(7)Naの少ない水、(8)非常に多様な環境、(9)周期的環境、である。この9つの条件に基づいて、これまでに提案されてきた生命誕生場;(1)ダーウィンの提案したWarm Little Pondとそこから派生した生命のスープ仮説、(2)パンスペルミア、(3)火星説、(4)深海熱水系説、(5)島弧のヒューマロール仮説、(6)自然原子炉間欠泉説、を検証してみる。我々の考える最も理想的な生命誕生場は冥王代の表層環境に普遍的に存在したと考えられる自然原子炉間欠泉説である。この説が提案する生命誕生場は、生命誕生場に必要な9つの条件をすべて満たし、生命誕生のための「ゆりかご」を提供することができる。世界の地質記録に基づいて考えると、冥王代地球における環境変動が一連の前駆的化学進化を支配したと考えられる。そして、環境変動への受動的応答として生命が誕生したと考えられる。

 生命の起源に代表される複雑系科学に取り組む際に重要なことは、カール・ポッパーが提案した検証可能性である。検証可能性を踏まえてモデルを提案することによって、生命の起源の解読が可能になるはずである。