12:00 〜 12:15
[BBG02-11] ウロコフネタマガイ由来の有機高分子を利用したpyriteナノ粒子の合成
キーワード:ウロコフネタマガイ、ヘムタンパク質、黄鉄鉱ナノ粒子
【背景・目的】ウロコフネタマガイ(Chrysomallon squamiferum)は、中央インド洋海嶺「かいれいフィールド」の熱水噴出孔付近で発見された深海性の巻貝である。この巻貝は軟体部の腹足の表面にナノ粒子状の硫化鉄(pyrite,FeS2)を含む鱗状の構造を持ち、外殻は炭酸カルシウム層上が硫化鉄層で覆われている。pyriteナノ粒子は優れた光起電力特性を持ち、太陽光発電などへの応用が期待されている物質である。しかしその安価かつ安定した化学的合成手法はいまだ確立していない。そのため生物の生成機構の解明し、それを工業的に応用することが期待されている。また金属ナノ粒子の生成には、粒子が凝集し、マクロ化することを防ぐ分散剤の存在が重要であると考えられている。そのため本研究では、ウロコフネタマガイの生体中においてpyriteナノ粒子に結合し、凝集を防ぐ鉄結合能を持つ物質の同定、並びにそれを用いた硫化鉄ナノ粒子のin vitroでの合成を目的としている。
【概要】本研究ではウロコフネタマガイの鱗状構造及び外殻より抽出された有機物質を分析し、鉄との相互作用により硫化鉄ナノ粒子の生成に関わる因子の探索を行った。
鱗状構造について、酸に安定なpyriteを嫌気条件下で亜鉛と三価クロムを用いて還元することで溶解した。本研究室で開発されたHPLCポストカラム法を用いた鉄結合物質探索法により、溶解液中に鉄と結合能をもつ低分子有機物が大量に含まれていることが判明した。この低分子有機物に対し陽イオン交換樹脂、逆相クロマトグラフィーを用いることで単離・精製を行った。単離された低分子有機物に対して質量分析法やNMRを用いることでその構造決定を試みた。
外殻においては1 M酢酸を用いて炭酸カルシウム層を溶解した後、酢酸不溶である硫化鉄層に対しSDS/DTTを用いた抽出を行った。この外殻由来の抽出液に対しSDS-PAGEを行ったところ硫化鉄層に特異的なバンドが得られた。このバンドはLC-MS/MS解析によりヘムタンパク質であることが判明した。ヘムタンパク質は生体内で鉄と結合していることが知られており、この外殻由来のヘムタンパク質も鉄との結合に関与していると考えられる。
これらのウロコフネタマガイの硫化鉄構造から得られた、鉄との親和性が高い物質は硫化鉄構造の形成、及び硫化鉄のナノ粒子化に深く関わっていると予想される。現在、こうした鉄結合能が高いと考えられる物質を用いることでin vitroでのpyriteナノ粒子の生成を試みている。
【概要】本研究ではウロコフネタマガイの鱗状構造及び外殻より抽出された有機物質を分析し、鉄との相互作用により硫化鉄ナノ粒子の生成に関わる因子の探索を行った。
鱗状構造について、酸に安定なpyriteを嫌気条件下で亜鉛と三価クロムを用いて還元することで溶解した。本研究室で開発されたHPLCポストカラム法を用いた鉄結合物質探索法により、溶解液中に鉄と結合能をもつ低分子有機物が大量に含まれていることが判明した。この低分子有機物に対し陽イオン交換樹脂、逆相クロマトグラフィーを用いることで単離・精製を行った。単離された低分子有機物に対して質量分析法やNMRを用いることでその構造決定を試みた。
外殻においては1 M酢酸を用いて炭酸カルシウム層を溶解した後、酢酸不溶である硫化鉄層に対しSDS/DTTを用いた抽出を行った。この外殻由来の抽出液に対しSDS-PAGEを行ったところ硫化鉄層に特異的なバンドが得られた。このバンドはLC-MS/MS解析によりヘムタンパク質であることが判明した。ヘムタンパク質は生体内で鉄と結合していることが知られており、この外殻由来のヘムタンパク質も鉄との結合に関与していると考えられる。
これらのウロコフネタマガイの硫化鉄構造から得られた、鉄との親和性が高い物質は硫化鉄構造の形成、及び硫化鉄のナノ粒子化に深く関わっていると予想される。現在、こうした鉄結合能が高いと考えられる物質を用いることでin vitroでのpyriteナノ粒子の生成を試みている。