日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BG 地球生命科学・地圏生物圏相互作用

[B-BG03] 地球惑星科学と微生物生態学の接点

2018年5月23日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:砂村 倫成(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、濱村 奈津子(九州大学)、木庭 啓介(京都大学生態学研究センター、共同)、諸野 祐樹(海洋研究開発機構高知コア研究所)

[BBG03-P08] 好塩性アーキアが生産する脂質コア中の不飽和アーキオール誘導体の構造決定

*山内 敬明1 (1.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

キーワード:アーキア、好塩性、エーテル脂質、構造決定

アーキアは全て特徴的な脂質コアであるアーキオール(C20イソプレノイドジエーテル)()を持っている。さらに好塩性アーキアはC25イソプレノイドを一つ持つC25-C20ジエーテルを生産する[1]。また近年Dawsonらは幾つかの超好塩性アーキアでは,アーキオールとC25-C20ジエーテルおよびその不飽和体が生産され,高塩分培養条件下で不飽和化合物の割合が増加することを報告した[2]。発表者は一昨年度本年会にてDawsonの提唱する構造の化合物(構造)を既報[3]に従い合成し,そのTMS誘導体の構造解析を行なった。本化合物は,そのマスフラグメントが明らかに異なり,少なくともではない二重結合の位置が異なる異性体が真の不飽和ジエーテルであることが示唆された[4]。
 このアーキオール誘導体の真の構造について,1)Dawsonの不飽和ジエーテルの“真の”構造はテトラエーテル脂質の生合成過程に関する研究結果[5]から,イソプレノイドの末端側に二重結合を持ったまたはであると推定した。2)また構造の不飽和イソプレノイドのグリセロールへの結合位置が異なる異性体であるもヒドロキシアーキオール類との関連から可能性はあると考えた。そこでこの3異性体を化学的に合成し,そのトリメチルシリル(TMS)エーテル誘導体のマススペクトルを比較した。結果からまでの化合物について誘導体化しDawsonの不飽和ジエーテルのTMS化体として報告されているマススペクトルと比較を行なった。およびはそのマススペクトルがかなり異なり,またはについては類似しているものの少し異なる点もある,という結果になり全てがDawsonの不飽和ジエーテルのものと一致しなかった。これは,Dawsonの不飽和ジエーテルは通常のイソプレノイド生合成から生じた(たとえばフィトールのように)メチル基分岐位置に二重結合を持つものでなく,おそらく完全な飽和イソプレノイドであるアーキオールが生成した後に二重結合を生物が作ったような,全く異なった位置に二重結合を持ったものか,(にさらに二重結合の異性体を含む)の混合物であると推察される。

[1] De Rosa et al., J. Gen. Microbiol., 128, 343 (1982). [2] Dawson et al. Org. Geochem., 48, 1 (2012). [3] Yamauchi Res. Org. Geochem., 29, 71 (2013). [4] Yamauchi (2016) JpGU meeting 2016 BA001-P05. [5] Nemoto et al. (2003) Extremophiles, 7, 235.