日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG09] 地球史解読:冥王代から現代まで

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 101 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)、座長:藤崎 渉(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

14:15 〜 14:30

[BCG09-09] 太古代石英質砂岩の起源

*沢田 輝1石川 晃1磯崎 行雄1 (1.東京大学広域科学専攻)

キーワード:太古代、大陸成長、砂岩、微量元素

花崗岩質大陸地殻は主にプレート沈み込み帯で形成される。地球史を通じた大陸成長は、固体地球の進化、特にプレートテクトニクスの起源と変遷の結果である。これまでの多くの地球化学的研究は、大陸地殻をマントルや海洋地殻から分化した仮想的な1つの塊とみなしてその組成変化を議論してきたが、地球史前半に当たる太古代や原生代前期の大陸がどのような形態で存在したかは不明な点が多く、大陸の個数や形態の変化に注目した議論は少ない。

砂岩構成粒子の淘汰度は、後背地からの運搬距離を反映する。未淘汰砂岩の組成は後背地の岩石構成とほぼ一致する一方、淘汰の進んだ砂岩は、風化・変質により長石や有色鉱物が選択的に除去されるため、石英質となる。ところが、急速な大陸成長がおきたと考えられてきた後期太古代に先行する約3.5 Gaには石英質砂岩が世界各地に産する。この理解不一致に対して2つの解釈、1) すでに太古代には広い花崗岩類の露出を持つ大陸が存在していたという解釈と、2)花崗岩類の露出は少なく激しい珪化変質を受けた苦鉄質・超苦鉄質岩や熱水性チャートが多量に露出していたために石英が大量に供給された、が可能である。さらに、後背地となった大陸の形態の違いを砂岩組成が反映する可能性も考慮する必要がある。

 本研究では、アフリカ南部、北米大陸、西オーストラリアの各地から採集した3.5~2 Ga(太古代~前期原生代)の石英質砂岩約50試料について、全岩の微量および希土類元素濃度を測定した。全ての砂岩のジルコニウム濃度は、花崗岩類とほぼ同じであることから、いずれの試料も珪化した岩石やチャート由来の砕屑物の含有量は少ないと判断される。一方、微量元素濃度を始原的マントルで規格化すると、70%の砂岩はZr正異常(=Zr/(Nd*Sm)^0.5)をもつ。花崗岩類にはないこの異常はジルコン濃集、すなわち淘汰による成熟度の高さ、そして運搬距離の長さを示す。3.5-3.0 Gaと2.5-2.0 Gaの砂岩は、3.0-2.5 Gaのものと比べて、約10倍大きいZr正異常を持つ。この結果は、おそらく後期太古代3.0-2.5 Gaの個々の大陸サイズが3.5-3.0 Gaのものよりも小さくなったために砕屑物の淘汰が未熟だったこと、そして大陸サイズが再度肥大化したのは原生代になってから(2.5 Ga以降)であったことを示唆する。換言すれば、3.5 Gaには原生代に匹敵する大きなサイズの大陸が存在したことを意味する。