日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG09] 地球史解読:冥王代から現代まで

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 101 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)、座長:青木 翔吾

15:30 〜 15:45

[BCG09-13] 西オーストラリア,海岸ピルバラ帯のクリバービル地域における縞状鉄鉱層堆積から浅海性横ずれ堆積盆の形成史

*清川 昌一1三木 翼1相原 悠平1,4寺司 周平1,3竹原 真美2堀江 憲路2 (1.九州大学大学院理学研究院地球惑星部門、2.国立極地研究所、3.新日鉄住金、4.IMPEX)

キーワード:中太古代、縞状鉄鉱層、横ずれ堆積盆、SHRIMP U-Pb年代、コアコンプレックス

クリバービル層はピルバラグリーンストーン帯の中で広く分布する縞状鉄鉱層の模式地となっている地層であり,クリバービル海岸に約10kmにわたって追跡できる.2011年には陸上掘削が行われ,200mの連続コアが取得されている.本地域は,狭い地域ながら地質構造が複雑であり,地層の上下方向,不整合,深海堆積物,浅海堆積物,変成作用の変化などでその形成過程は,当時の堆積場を復元する上でも重要である(Kiyokawa et al., 2006).本研究では,3カ所のU-Pb年代と詳細な地質調査を元に,本地域の構造発達史を整理し,また,縞状鉄鉱層についてその堆積場を考察する.

クリバービル地域は,グリーンストーン帯と被覆層およびフォーテスキュー層からなる.グリーンストーン帯は,下位からリーガル層,デキソンアイランド層,ポートロビンソン玄武岩(枕状溶岩),クリバービル層からなり詳細な層序研究がなされている(eg. Kiyokawa et al., 2014).被覆層は,陸源砂岩層を挟むリザードヒル層が不整合でこれらグリーンストーン層を覆っている.リザードヒル層は66ヒル部層と44ヒル部層があり,66ヒル部層はグリーンストーン帯褶曲時(つまり付加時)に形成し,44ヒル部層は横ずれ運動時にできた地層である.SHRIMPによるU-Pb age測定で,クリバービル縞状鉄鉱層下位の火山砕屑岩から3106Maの堆積年代を,66ヒル層の砂岩から3060Ma, 44ヒル層の砂岩から3020Maの砕屑性年代を得られた.
クリバービル地域は,海岸線に右横ずれの特徴を示す非対称褶曲・断層の変形構造が卓越し,変成度も,北部のワルコット島や南東部のリーガル・ニッコルウェルコンプレックスはアクチノ角閃石が形成されているが,クリバービル地域はプレーナイト・パンペリアイト相で低い変成度をする.44ヒル部層の分布から,菱形の部分が落ちた構造をしており,その周辺部のみに浅海砂岩層が不整合で分布する.この構造はこの地域の強い横ずれ運動(D2)変形時のものであり,この変形形成期はこの地域に広域伸張作用が起こっており,特にカラーサ花崗岩類(32.7億年)の上昇にも関係していると考えられる.東エジプト砂漠地帯の7億年前の島弧衝突帯でも,衝突後伸張作用になり広範囲で横ずれ堆積盆および中部地殻の上昇作用がおこり,コアコンプレックスを形成している.クリバービル地域の広域横ずれ作用も,島弧衝突後の大陸地殻内で起こった圧力解放に伴うコアコンプレックス作用が起こった可能性が考えられる