日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG09] 地球史解読:冥王代から現代まで

2018年5月22日(火) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)

[BCG09-P13] モンゴル・ゴビ砂漠東部,上部白亜系Bayanshiree層の 岩相層序とジルコン年代測定

*寺田 智也1ソクトバートル ヒシグジャウ2坂田 周平3青木 一勝4今山 武志5実吉 玄貴1 (1.岡山理大 生地、2.モンゴル科学アカデミー、3.学習院大 化学、4.岡山理大 基礎理、5.岡山理大 自然研)

キーワード:モンゴル、上部白亜系、岩相層序、ジルコン年代測定

モンゴルゴビ砂漠に分布する上部白亜系Bayanshiree層からは様々な脊椎動物化石が報告されている(Shuvalov, 2000).Bayanshiree層の最下部層の玄武岩からは101~92Maの年代値が報告されている(Shuvalov, 2000).一方,Bayanshiree層上部層準は,コニアチアン~サントニアンの軟体動物化石が報告されている(Shuvalov, 2000).しかしこれらの年代幅は大きく,また鍵層も報告されていない.そこで本研究では,比較的地層の連続性がよいKhongil Tsavを対象に,岩相層序と砕屑性ジルコンを用いたU-Pb年代測定から,Bayanshiree層形成時の古環境を明らかにする.

 Khongil Tsavで認められる地層は,下位よりUnit1およびUnit2に区分できる.Unit1では層厚0.1m~4.0mの粗粒~細粒砂岩と層厚0.2m~2.0mの塊状泥岩が認められ,砂岩にはトラフ型斜交層理とリップル葉理が認められる.Unit2では層厚0.2m~7.5mの粗粒~細粒砂岩と層厚0.1m~1.0mの塊状泥岩が認められ,砂岩にはトラフ型斜交層理とリップル葉理が認められる.また,Unit2最下部では,層厚4.0m~7.5mの赤色泥岩が認められる.これらの堆積相から,Bayanshiree層は河川堆積物であると考えられる.Unit1では約3.0m~6.0m,Unit2下部では約5.0m~10.0mの上方細粒化が認められることから,この河川はUnit1からUnit2に向かって大型化したと考えられる.さらに,Unit2最下部の赤色泥岩層は南東に向け層厚が薄くなっている.この地層の側方変化は,堆積場における沈降を示唆する.このことは,河川の流下方向がUnit1で北西,Unit2下部で南西に変化することと調和的である.
 層準の異なる26試料の測定を行った結果,最若年代は試料間で大きな違いはなく,120~130Maという年代幅を示す.これらの年代値は,化石から推定されている地質年代よりも有意に古いが,モンゴル周辺において120Ma以降にジルコン形成を伴うような酸性火成活動がなかったことと調和的である(Yarmolyuk et al., 2015).一方,年代ヒストグラムの結果から,本試料中の砕屑性ジルコンは,(1)120~130Ma,(2)170~380Ma,(3)400~540Ma,(4)750~2000Maの4つのグループに区分される.これらの特徴は,他の化石産出地であるBayanshireとBayshin TsavのBayanShiree層からも確認されることから,Bayanshiree層堆積時,後背地からの砕屑物質の供給源に大きな変化がなかったことが示唆される.また,(4)のグループに注目すると,白亜紀アジア大陸の古地理図の観点からその供給源の候補としてシベリアクラトンが挙げられる(Priyatkina et al., 2016).白亜紀以降モンゴルとシベリアクラトンの位置関係はあまり変わらない.したがって,Bayanshiree層が堆積した河川域は,モンゴルからシベリアクラトンに及ぶ約6,000,000km²の大規模河川域であった可能性がある.