日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG10] 顕生代生物多様性の変遷:絶滅と多様化

2018年5月21日(月) 09:00 〜 10:30 102 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:磯崎 行雄(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、澤木 佑介(東京大学大学院総合文化研究科)、座長:澤木 佑介(東京大学)

09:00 〜 09:15

[BCG10-01] カンブリア紀最初期のSSF化石層序の改訂:南中国雲南省澄江地域小濫田セクションの岩相層序およびSSF層序

*河野 聖那1磯崎 行雄1佐藤 友彦2張 興亮3劉 偉3 (1.東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系、2.東京工業大学地球生命研究所 、3.中国西北大学)

キーワード:カンブリア紀、SSF、雲南省

カンブリア紀最初期のSmall Shelly Fossils(SSF)層序は南中国雲南省において最も詳しく研究されている.中間的深度で堆積した澄江地域の小濫田セクションにおいて最下部カンブリア系の詳細な岩相およびSSF層序を検討した.下部カンブリア系は層厚約300 mにおよび,下位からリン酸塩岩からなる中誼村部層,ドロマイトからなる大海部層,シルトからなる石岩頭層が累重する.中誼村部層(約30 m)は岩相からさらに5つのユニットに細分される;すなわちユニット1:塊状のリン酸塩岩質ドロマイトと薄いリン酸塩岩互層,ユニット2:特徴的な薄い黒色泥岩,ユニット3:ドロマイトを挟在するリン酸塩岩,ユニット4:リン酸塩と薄いドロマイト質リン酸塩岩互層,そしてユニット5:層状ドロマイト質リン酸塩岩.

SSFはユニット4を除く中誼村部層の20層準,大海部層の1層準から得られ,3つの異なる群集(群集A~C)を識別した.群集Aは中誼村部層ユニット1下部から産しAcanthocassis orthacanthus, Protohertzina anabarica, and Protohertzina unguliformisで構成される. 群集Bは中誼村部層ユニット1上部からユニット5まで幅広く産し,Ocururanus finial, Yunnanopleura biformis, Helcionella sp.から構成される.群集Cは中誼村部層ユニット5から産しArchaeospira sp., and Obtusoconus sp., Conopoconus sp.を含む. また,ConothecaSiphogonuchites属は中誼村部層下部から大海部層にわたり共通して得られた.さらに,隣接する洪家沖セクションのSSF層序においても小濫田セクションにおける群集A~Cと非常に良く対応するこれら3つの群集が識別できた.

本研究の結果,中誼村部層は3つのSSF群集(A~C)帯に区分できることが明らかとなった.この層序区間はこれまで二分されており,本群集AはSteiner et al.(2007) によるSSF第一群集に相当し,群集BおよびCはSSF第二群集にほぼ相当する.しかし,群集Bの初出は,従来の第二群集の出現とされた層準よりも明らかに下位である.このことから, SSFの多様化はこれまで信じられてきたよりもずっと早く,カンブリア紀の始まりとほぼ同時期におきたことを示唆する.