日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT06] 地球生命史

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 101 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:本山 功(山形大学理学部地球環境学科)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)、座長:本山 功生形 貴男守屋 和佳

11:00 〜 11:15

[BPT06-07] 北海道苫前地域のセノマニアン/チューロニアン境界堆積岩中のパイオニア植物バイオマーカーに記録された古環境変動

*池田 雅志1沢田 健2安藤 卓人3中村 英人4高嶋 礼詩5西 弘嗣5 (1.北海道大学理学院自然史科学専攻、2.北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学部門、3.北海道大学北極域研究センター、4.大阪市立大学大学院理学研究科、5.東北大学学術資源研究公開センター 東北大学総合学術博物館)

キーワード:パイオニア植物、地衣類、バイオマーカー、蝦夷層群、C/T境界、白亜紀

[はじめに]極限環境下でも強い生命力を誇り、高等植物に先行して裸地に移入する地衣類はコケ植物やシダ植物などと共にパイオニア植物と呼ばれている。パイオニア植物は地球生命史において古くから登場していたことが知られているが、地衣類はその生息環境、生体構造の特殊性から化石記録に乏しく、古環境における植生の応答についても知られていない。近年、地衣類の分子化石(バイオマーカー)が古代堆積物から報告されている(Watson et al., 2005など)。本研究では、大きな環境擾乱イベントを記録した層準を含む堆積岩試料から、バイオマーカー分析を行い、地衣類バイオマーカーの探索とその変動を調査した。

[試料と方法] 本研究では、北海道苫前地域大曲沢川に分布する上部白亜系蝦夷層群佐久層のCenomanian-Turonian境界期の堆積岩に含まれる有機物から、地衣類バイオマーカーの探索と環境変動に対する地衣類植生の応答を調べた。Cenomanian-Turonian境界では環境擾乱イベントである海洋無酸素事変(OAE)2が発生したことが知られている。本調査地域ではOAE2層準は約700mに亘り、試料は数メートル間隔で泥岩のみを採取した。OAE2の各区分はδ13Cwood値とオスミウム同位体比から決定し、バイオマーカー分析はGC-MSを用いて分析を行った。

[結果と考察]大曲沢川試料において、ステラン、ホパンの分析結果から、陸からの堆積物の寄与が高く、また未熟成な試料(ビトリナイト反射率で約0.4%;褐炭~亜瀝青炭)であることを確認した。これらの結果はAndo et al.(2017)と同様である。本試料中からはジベンゾフラン化合物が検出された。自然界においてジベンゾフランは植物や菌類、地衣類が生成することが知られているが、地衣類二次代謝物の一種であるジベンゾフラン類は地衣類特有の構造をもつものが多い。多くの地衣類二次代謝物ジベンゾフラン類に共通である特徴として1位(および/または9位)にアルキル基がついているという点が挙げられる。これは高等植物起源のジベンゾフラン類にはない特徴である。このことからメチルジベンゾフラン中の1-メチルジベンゾフランの割合を示した”1-メチルジベンゾフラン比”(1-MDBF ratio)を地衣類植生の指標として用いた。試料から検出されたメチルジベンゾフラン、ジメチルジベンゾフランそれぞれにおいて1位にメチル基がついたアルキルジベンゾフランの比は同様の挙動を示したことから、堆積岩中においてもその特徴が残されていると考えられる。1-MDBF比は1st build up期では初めから終わりにかけて増加し、Trough期で低い値を、その後2nd build up期からPlateau期にかけて増加していく傾向がみられた。またTrough期のOs同位体比が一時的に減少する直前や巨大火成岩岩石区 (LIPs)の活動が活発になった直後に増加スパイクがみられた。この変動は一つないし複数の環境変動によって左右されている可能性があると解釈している。