日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT06] 地球生命史

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:本山 功(山形大学理学部地球環境学科)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)

[BPT06-P08] 中新統から産出する石灰質ナノ化石Coccolithus属の大きさの変化

*鈴木 和規1亀尾 浩司2 (1.千葉大学融合理工学府地球環境科学専攻、2.千葉大学理学研究院地球科学研究部門)

キーワード:石灰質ナノ化石、サイズ変化

石灰質ナノ化石Coccolithus属は暁新世初期に出現し,現在にかけて海洋に生息している石灰質ナノプランクトンのグループの一つである.一般にCoccolithus属のうち,大変長い生息レンジを持つとされるCoccolithus pelagicus (Wallich) Schillerは,現生種の主な生息域に基づいて寒冷種であると考えられているが(McIntyre and Bé, 1967),最近の研究では,環境の違いによって個体のサイズと形態的特徴がわずかに異なっているともされる(Parente et al., 2004).化石種も,現生種とは形が異なる(西田,1982)という見解や,中緯度地域や赤道地域からもその産出が認められる(Okada and Bukry, 1980)ことなどを考慮すると,従来C. pelagicus とされてきた化石種がすべて現生種のC. pelagicus と同一であるかどうかは疑わしい.そこで,本研究では化石種Coccolithus属の形態と大きさが時代によってどのように違うのかを明らかにするために,中新世におけるCoccolithus属の形とサイズの変化を詳細に検討した.本研究で検討した試料はカリブ海と太平洋の試料であり,取り扱った年代はおおむね13.5 Maから8 Maである.観察および個体の計測には偏光顕微鏡を用い,Coccolithus属の個体の外形と中央開口部の長軸長,短軸長,そして面積の計測を行った.
検討した地点の試料では,おおむね共通したCoccolithus属のサイズ変化が見られる.産出する個体サイズの分布集中は上位の層準に向かうにつれて大型個体が増加していき,ある時期を境に小型個体が増加するという傾向を繰り返していることが明らかになった.大型個体が消滅する年代は,どこでも約10.3 Maと9 Maである.このうち,10.3 Maより古い時代に見られる長軸長12 µm以上の個体は独立したサイズ分布を示し,顕微鏡下での特徴も小型のものとは異なることから,それらはCoccolithus miopelagicus Bukryに相当すると考えられ,消滅する年代はおおむね10.7 Maである.一方,それ以外にもやや大型の個体が存在する層準も認められるが,形の上で小型のものと大きな違いは見られない.約9 Maから8 Maに見られる小型個体が多く見られる層準は,石灰質ナノ化石Reticulofenestra属でも見られることから(Young, 1990など),これは特定の属によらない個体サイズの小型化であり,石灰質ナノプランクトン全体での変化である可能性もある.
引用文献
McIntyre, A. and Bé, A. W. H., 1967, Deep - Sea Res., 14, 561–597.
西田史朗, 1982, 奈良教育大学紀要 (Bull. Nara Univ. Educ.), 31, 63–77.
Okada, H. and Bukry, D., 1980, Marine Micropaleontology, 5, 321–325.
Parente, A. et al., 2004, Micropaleontology, 50, 107–120.
Young, J. R., 1990, Micropaleontology, 9(1), 875–912.